1995 Fiscal Year Annual Research Report
海洋性好冷細菌のNa^+輸送性ATP合成酵素に関する研究
Project/Area Number |
06839001
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
高田 泰弘 北海道大学, 大学院・理学研究科, 講師 (10163213)
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Keywords | 海洋細菌 / 好冷細菌 / エネルギー代謝 / ATP合成酵素 / ナトリウムイオン / 共役イオン |
Research Abstract |
H^+輸送性F_0F_1-ATPaseに類似してNa^+駆動力でATPを合成する非常にユニークな海洋性好冷細菌Vibrio ABE-1株のNa^+輸送性ATP合成酵素の性質を明らかにするために、今年度は昨年度に精製が完了し、その酵素学的及び蛋白質化学的性質が詳細に調べられた本菌の細胞膜結合性ATPaseの精製標品を人工膜小胞に再構成して本酵素の諸性質の調査を試みた。大豆抽出脂質を超音波処理して調製した人工膜小胞と精製酵素を界面活性剤(Triton X-100)存在下で混合し、その後界面活性剤を除去することで本酵素は膜小胞に再構成された。この再構成プロテオリポソームにATPを添加するとH^+の膜小胞内への流入が観察され、本酵素がATPの加水分解に伴ってH^+を輸送する能力を持つことがわかった。このことは、本酵素が少なくとも多くの生物に偏在するH^+輸送性F_0F_1-ATPaseの機能を持ち、また酵素が機能を十分に発現できる形で再構成が行われたことを示唆する。今後この系を用いて、ATP依存性のNa^+輸送能や、さらにこの系にH^+やNa^+濃度勾配を人為的に形成してATP合成を調査する予定である。 本酵素の生理学的役割をより明確にするため、Na^+輸送性ATP合成酵素の機能を欠く突然変異体の分離を試みた。エネルギー代謝の様々な機能を欠く変異株を含むことが知られる抗生物質ネオマイシンに対する耐性株(155株)を自然突然変異によって得て、その中からプロトノフォアであるCCCPに感受性の変異株を9株選別した。その中のいくつかの株はintact細胞でのATP合成が野生株に比べてよりCCCP感受性であった。これらの株の膜結合性ATPaseのATP加水分解活性の性質を調査したところ、酵素の基本的な性質は大きく変化していなかったが、ある一つの変異株ではその活性が中性からアルカリpH領域で野生株に比べて低下していた。
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