1994 Fiscal Year Annual Research Report
海洋細菌に特徴的なナトリウムポンプの生理・生態学的意義
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06839007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木暮 一啓 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (10161895)
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Keywords | 海洋細菌 / ナトリウム駆動型呼吸鎖 |
Research Abstract |
海洋細菌のビブリオ科細菌を中心に、細菌の系統とナトリウム駆動型呼吸鎖の分布との関係を調べた。既に16S rRNAによって系統関係が確認されているビブリオ科の標準菌株15株を人工海水培地で培養後、低浸透圧の緩衝液中で溶菌し、膜成分を抽出した。この膜成分中にNADH、一価の陽イオンを添加し、340nmの吸光度の減少からNADH oxidase活性を測定した。ナトリウム駆動型呼吸鎖の有無は、ナトリウム添加時の活性がカリウムのそれの2倍以上であることと、海洋細菌、Vibrio alginolyticusのナトリウム駆動型呼吸鎖の特異的阻害剤であるHQNOの効果を基準に判断した。この結果、Vibrio科の細菌の間にこの呼吸鎖が広く分布していることが明らかになった。ただし、16S rRNAによって互いに近縁と見られる菌全てに見られるわけではなく、例えばVibrio fisheriとV.alginolyticusにはそれが見られるのに対し、これらに極めて近縁なV.anguillarumには欠損している可能性が高く、必ずしも相互の関係がパラレルとは限らないことが明らかになった。これが確かな場合、ナトリウム排出性呼吸鎖の進化、系統と細菌のそれとのずれを説明する新たな視点が必要となり、他の遺伝形質との比較を含め、極めて興味深い情報を提供することになる。これはさらに海洋細菌の起源、その定義などに新たな意味づけを与えるものである。本年度はこのようにナトリウム駆動型呼吸鎖の分布と系統との関係に焦点を置き、当初予定のこの呼吸鎖のエネルギー論的意義については十分な検討まで果たせなかった。これは来年度の課題としたい。
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