1994 Fiscal Year Annual Research Report
魚類の発達初期における浸透圧調節と卵黄嚢上皮塩類細胞
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06839010
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金子 豊二 東京大学, 海洋研究所, 助手 (70221190)
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Keywords | シロサケ / 塩類細胞 / 卵黄のう上皮 / 発眼卵 / 浸透圧調節 |
Research Abstract |
広塩性魚類のシロサケは仔稚魚期に優れた海水適応能を有しているが、鰓、腸、腎臓等の成魚で重要な浸透圧調節器官が十分に発達していない発眼期の卵でも海水中で生存することができる。しかし、その機構は未だ解明されていない。そこで、発達初期における浸透圧調節機構を明らかにするため、シロサケ発眼卵を淡水から海水に移行した際の囲卵腔液および体液の浸透圧の変化を調べるとともに、卵黄嚢上皮に存在する塩類細胞の形態的変化を観察し、浸透圧調節との関連を検討した。 大槌川産のシロサケ発眼卵を海洋研の250リットル水槽(水温10〜11℃)で飼育した。発眼卵を淡水から50%および100%海水に移行し、経時的に卵、卵殻および胚の重量を測定し、囲卵腔液の重量を求めた。次にマイクロインジェクターを用いて、卵表面より囲卵腔液を、さらに胚の尾部血管より血液をそれぞれ採取した。囲卵腔液および血液の浸透圧は、氷点降下法を原理とするナノリッターオスモメーターで測定した。また、卵黄嚢上皮をミトコンドリアに特異的な蛍光色素であるDASPEIで染色し、移行に伴う塩類細胞の大きさの変化を調べた。さらに、卵黄嚢上皮の走査電子顕微鏡による観察を合せて行なった。 シロサケ発眼卵は海水に移しても卵重量に変化はないが、胚は脱水されて重量が僅かに減少し、逆に囲卵腔液は増加した。囲卵腔液の浸透圧は、移行後3時間までに環境水の浸透圧とほぼ等しくなり、従って卵殻は海水に対して透過性があると考えられる。血液の浸透圧は3時間をピークに上昇し、その後徐々に下がるが、移行7日目でも移行前よりも有意に高い値であった。一方、卵黄嚢上皮の塩類細胞は海水移行に伴い大型になり、淡水中ではほとんど見られなかったpitが海水移行後には卵黄嚢上皮表面に頻繁に観察された。以上の結果、発眼期のシロサケで、海水移行に伴う体液浸透圧の過度の上昇が抑えられ、この浸透圧力調節機構に卵黄嚢上皮の塩類細胞が関与していると考えられる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] T.Kaneko,S.Hasegawa,Y.Takagi,M.Tagawa,T.Hirano: "Hypoosmoregulatory ability of eyed-stage embryos of chum salmon" Marine Biology. (印刷中). (1995)
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[Publications] F.G.Ayson,T.Kaneko,S.Hasegawa,T.Hirano: "Differential expression of two prolactin and grouth hormone genes during early development of tilapia in fresh water and seawater." General and Comparative Endocrinology. 95. 143-152 (1994)
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[Publications] F.G.Ayson,T.Kaneko,S.Hasegawa,T.Hirano: "Development of mitochandrion-rich cells in the yolksac mombrane of embryos and larvae of tilapia in fresh water and seawater" Journal of Experimental Zoology. 270. 129-135 (1994)