1994 Fiscal Year Annual Research Report
デトリタス食性及び肉食性カイアシ類(甲殻類)の摂餌生態に関する研究
Project/Area Number |
06839019
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大塚 攻 広島大学, 生物生産学部・附属水産実験所, 助教授 (00176934)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 周平 東京大学, 海洋研究所, 助手 (70134658)
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Keywords | カイアシ類 / 肉食 / ヂトリタス食 / 上顎 / 上唇 / 分泌腺 / シリカ / 感質毛 |
Research Abstract |
1.深海性ヘテロラブトゥス属カイアシ類はカイアシ類コペポディッドを主食としていることが消化管内容物調査から判明した。本属の上顎咀嚼歯の最も腹側に位置する歯(以後V1歯という)は著しく伸長し、上唇から先端が突出している。V1歯先端は注射針のように鋭く尖り、さらに内径数μmの小孔がある。この歯は先端から基部まで中空になっており、エネルギー分散型X線解析装置を用いた解析から、先端のみシリカが沈着して硬度を増していたことも判明した。シリカの沈着を担うのは上顎咀嚼部基部の分泌腺であることも透過型電子顕微鏡の解析から推定された。また、上唇裏面左右には巨大な分泌腺の開口部が1対あり(長さ約30μm)、巨大分泌腺開口以外にも多数の小型分泌腺が存在することが走査型・透過型電子顕微鏡の観察で判明した。V1歯基部孔と上唇の巨大分泌腺開口部は、非哺食時には完全に密着している状態にある。このような上顎,上唇の特殊な構造は他の浅海性肉食性カイアシ類にはまったく見られなかった。以上の事実から、この深海性肉食性カイアシ類が次のような極めて特殊な摂餌方法を用いていることが推定された。まず、上唇の巨大分泌腺開口部からカイアシ類などの餌動物の動きを止めるための麻酔あるいは毒がV1歯基部孔を通してその中空部へ非捕食時に補充される。第2下顎で捕られた餌をV1歯で突き刺して、先端の注射針からその分泌物を餌へ注射し、動きのなくなった餌を嚥下する。なお、上唇分泌物の物質同定は今後の課題であるが、テトロドトキシンである可能性は本研究によって否定された。 2.デトリタス食的傾向の強い4科9属9種の外洋性カイアシ類の摂餌に関連した化学受容器と推定される第2下顎と顎脚の感隔毛の微細構造を走査型電子顕微鏡で観察し、その形態から6タイプを識別した。今後は透過電子顕微鏡で細胞レベルでの微細構造を明らかにし、機能の相違、食性との関連を推定する。
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