1994 Fiscal Year Annual Research Report
ヘテロダイマーの固相化学発光反応に及ぼす結晶構造の影響の解明
Project/Area Number |
06854034
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岡本 秀毅 岡山大学, 理学部, 助手 (30204043)
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Keywords | 固相化学発光 / 示差走査熱分析法 / フリードマン法 |
Research Abstract |
表題化合物1のエステル誘導体1a;(CO_2Et)_2、カルボン酸1b;(CO_2H)の固相熱分解により化学発光を確認した。モノエステル1c;(CO_2Me)、ハロゲン誘導体1d;(ハロゲン=F or Cl)では化学発光は観測されなかった。固相熱分解を示差走査熱分析(DSC)により追跡しフリードマン法により熱力学解析した結果、次の二点が明らかになった。i)化学発光性の1abでは非化学発光性の1cdよりエネルギー放出量が約10kcalmol^<-1>大きい。ii)活性化エネルギーは1bで反応率に依らず一定、1cでは反応の進行と共に小さくなった。結晶の1aではDSCで二つのピークを示し、低温ピーク、高温ピークはそれぞれ1b、1cと同様の挙動を示した。粉末の1aは化学発光はなくなり、1cと同様のDSC挙動を示した。以上より非化学発光性の1c、粉末の1aはゆるい結晶構造を有し、反応のエネルギーが結晶格子の構造変化に消費され発光はない、一方、1b、結晶の1aは強固な結晶構造を持ち、放出されたエネルギーが構造変化に使われず効率よく光エネルギーへ変換されると結論できる。1は熱的に不安定であるが、1aについてX線構造解析に成功した。1aの結晶中ではエステル基が柱のように配向し個々の分子が独立した結晶構造を形成する。当初、近隣分子士志の相互作用により生成系に安定な励起錯体を形成可能な構造があると予想したが、隣接分子同士の振動、衝突あるいは電子的相互作用によるエネルギー消費が少ない構造を持つことがわかった。本研究により1の固相化学発光において、強固な結晶構造が反応エネルギーを保存し、また、近接分子との相互作用を抑制することにより、光エネルギーへ変換する場を形成していることが明らかになった。DSC法を化学発光反応に初めて適用しエネルギー変換場としての結晶の影響解明に有効であることを示した。
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Research Products
(1 results)