1994 Fiscal Year Annual Research Report
らせんキラリティをもつ遷移金属多核錯体の合成とその不斉反応への応用
Project/Area Number |
06854037
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
鈴木 孝義 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助手 (80249953)
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Keywords | らせんキラリティ / ヘリケイト / 銀(I)錯体 / 無限鎖構造 / 二核錯体 |
Research Abstract |
申請者は本(萌芽的)研究において、ピリジン誘導体である光学活性な架橋配位子を用い、らせんキラリティをもつ金属錯体の合成とその不斉反応への応用について調査している。この種の光学活性配位子を用いて銀(I)錯体を合成すると無限らせん鎖構造をもつポリカチオン性錯体が、また配位子のラセミ混合物を用いると全く構造の異なる二核錯体が得られることを既に明らかにした。本年度は、ポリカチオン性無限らせん鎖の構造に対する陰イオンの影響を調べるためAgPF_6を用いて合成を行った。結晶構造解析によりらせん鎖中の銀イオンと陰イオン間に相互作用がなく、また無限鎖のらせん半径が大きくなることが明らかとなった。このことから、らせん鎖構造をもつ錯体の合成において、対イオンの選択が重要であることを実証した。また、ヘリカルキラリティをもつ多核錯体の均一系触媒としての可能性を探るため、この多核錯体の溶存構造を分光学的手法を用いて調べた。溶液中1:1の錯形成は認められたが、ラセミ混合配位子を用いた場合との差異はなく、結晶解析において見いだされた無限らせん鎖構造は保たれていないと推定された。また、銀-配位子間の解離-再結合が非常に早く起こっていることも実証された。このことから、不斉反応に応用するためには、置換不活性な金属イオンを用いることが必要不可欠であると結論できた。金属イオンに銅(I)を、また架橋配位子にビピリジン誘導体を用いて合成を試みたが、いずれも構造解析に適した結晶を得ることができなかった。現在、八面体型六配位構造をもち置換不活性である金属イオン(コバルト、ロジウム、レニウムなど)を用いた錯体の合成を試みている。また、この配位子の架橋配位であるジオキソレイン間の構造が、ヘリケイト合成に立体的に不利であると推定されたため、新たな架橋配位子の合成も行っている。
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