1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06855102
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
竹内 孝江 奈良女子大学, 理学部, 助手 (80201606)
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Keywords | 有機ケイ素化合物 / ブチルメチルシラン / ブチルジメチルシラン / ブチルトリメチルシラン / Ab Initio MO計算 / マススペクトル / イオン-分子反応 / フラグメンテーション機構 |
Research Abstract |
新機能性材料として注目されている有機ケイ素ポリマーの合成反応を設計することを目的として,有機ケイ素とアルケンのイオン-分子反応をMS/MS実験および量子化学計算により研究した。 まず,CH_3SiH_2^+イオンとエチレン分子とのイオン-分子反応の反応機構について検討した。MS/MS実験に使用したCH_3SiH_2^+イオンは,メチルプロピルシランイオンの単分子分解によって生成させた。衝突室にエチレンガスを導入し,衝突エネルギーを2keV(高エネルギー)および50eV(低エネルギー)の2つの条件で,CH_3SiH_2^+イオンと衝突させた。MS/MS装置はJEOL JMS-HX/HX110Aタンデム質量分析計を用いた。このイオン-分子反応のポテンシャルエネルギー曲線と最適化構造をab initio MO法により計算した。その結果,CH_3SiH_2^+イオンとエチレン分子はケイ素にエチレンのπ-オ-ビタルが配位した構造の安定な中間体を形成し,この反応は,1.3eV(3-21G基底)の発熱反応であることがわかった。この中間体では,エチレンのπ-結合とケイ素原子との距離は2.3Aで,正電荷はケイ素原子に局在していた。生成した[CH_3SiH_2^+]C_2H_4は,さらにより安定な中間体(C_2H_5)(CH_3)SiH^+と(CH_3)_3Si^+に異性化することがab initio MO計算の結果からわかった。 次に,ブチルメチルシラン,ブチルジメチルシラン,およびブチルトリメチルシランの分子イオンの分解機構をリンク走査法とab initio MO法を用いて検討した。Si原子に結合するメチル基の数が増えるにつれて,CH_3脱離によるイオンが多く生成した。分子イオンからのH脱離はSiに結合したHに由来し,H_2脱離は1,1-脱離と1,4-脱離によることがわかった。Si-C超共役による安定化エネルギーが[CH_3SiH_2CH_2CH_2]^+生成の推進力であることもわかった。Si-C超共役による安定イオンの存在は,有機ケイ素に特徴的な性質であり,これを生かした機能性有機ケイ素の分子設計への足がかりが得られた。
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[Publications] Takae Takeuchi: "Fragmentation of Silaspiroalkanes in El Mass Spectrometry" J.Mass Spectrom.Soc.Jpn.42. 165-175 (1994)
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[Publications] Takae Takeuchi: "An Ab initio MO Study of the Fragmentation Mechanism of the Cycloglycylglycine lon in Mass Spectrometry" J.Mass Spectrom.Soc.Jpn.42. 277-286 (1994)
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[Publications] Takae Takeuchi: "Fragmentation Mechanisms of Butylmethylsilane,Butyldimethylsilane,and Butyltrimethylsilane lons in El Mass Spectrometry.1.Experimental Approach" J.Mass Spectrom.Soc.Jpn.43. 53-63 (1995)