1994 Fiscal Year Annual Research Report
溶液結晶化過程における高分子鎖の分子運動に関する研究
Project/Area Number |
06855113
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
佐々木 隆 福井大学, 工学部, 助手 (50242582)
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Keywords | アイソタクチックポリスチレン / 溶液結晶化速度 / 分子運動 / 示差熱分析法 / 拡散極限 |
Research Abstract |
高分子の溶液からの結晶化過程における分子運動の特性、特に拡散極限が成り立つかどうかをしらべるため、アイソタクチックポリスチレンの溶液からの等温結晶化速度を測定した。まず溶液結晶化速度の種々の測定手法を検討し、実験データの再現性の観点から、示差熱分析法を用いることにした。溶媒としてトリプロピオニン(TP)、フタル酸ジメチル(DMP)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)を用いた。実験より得られた等温結晶化速度の過冷却度(結晶化温度)依存性をしらべたところ、TPおよびDMSO中では、結晶化速度は過冷却度とともに単調に増加したが、DMP中においては70℃付近で極大を示すことがわかった。このことは、溶液結晶化においても拡散項(分子運動の影響)が無視できないことを示している。次に、上記データをさらに詳しく解析した。ここでは、結晶化速度式中の拡散項について、Fokker-Planck方程式から得られる一般化された理論をもとに、非線形最小二乗法により、高分子鎖の運動の活性化エネルギー、および高分子と溶媒との相互作用パラメタを評価した。その結果、高分子と溶媒との相互作用は溶媒に強く依存し、その強さ(摩擦の大小関係)は、DMP>TP>DMSOであることがわかった。それと同時に、これら3種の溶媒のうち、TPおよびDMSO中では拡散極限が成り立たないことが示された。 以上のように本研究により、非平衡系である高分子の過冷却溶液からの結晶化において、拡散極限が成り立たないという分子運動の特異性が、はじめて明らかにされた。その意味で、今回得られた知見の意義は大きい。
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