1994 Fiscal Year Annual Research Report
陸上起源物質による湿原汚染の実態把握のための新技術の開発に関する研究
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06858054
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
冨士田 裕子 北海道大学, 農学部, 助手 (50202289)
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Keywords | イオン交換樹脂 / 吸着イオン / 栄養塩類動態 / 水質変化 / 湿原植生 |
Research Abstract |
湿原の生物はわずかな環境の変化に対して極めて敏感で、特に水質変化に対する生物相の変遷は、尾瀬ケ原や釧路湿原を始めとして国内外で重大な環境問題となっている。だが、陸上起源の汚染物質が湿原に多量に流入しても湿原の膨大な水によってその影響が過少に計量される、汚染物質の流入は季節変動や降水量などに左右される等の理由から、実際に生物相が変化しているにもかかわらず、既存の水質分析法では、汚染の実態がとらえにくく過小評価されるケースが多い。これは、水のサンプリングが、湖沼や河川に比較して極めて困難なうえに、湿原内(特に泥炭地)では流量や流速の正確な測定ができず、水質をある一定時における水のイオン濃度として評価せざるを得ないことに起因している。そこで本研究は、湿原水中の栄養塩類を水質に加えて流速・流量も加味した総合的な量としてとらえるための新手法の開発を目的とし、イオン交換樹脂をトラップとして用い、一定期間内にあるポイントを通過するイオンの総量を測定しようというものである。 本年度は、これまでの問題点であった樹脂を入れるトラップの素材、湿原内で最も効果的にイオンをキャッチするためのトラップの形について(樹脂の粒径に適合し、かつ泥炭水の動きを妨げず浸透性に優れる)室内実験および野外での予備実験により検討を続けた。湿原に設置したトラップでキャッチしたイオンの量と泥炭水の水質分析結果とを比較してみたが、実際よりも過小評価してしまうケースがあった。これはトラップの素材と形状に問題が残っていること、トラップの放置期間を個々の湿原の泥炭の質や水収支にあわせて決めなければならないことなどに起因すると考えられた。今後は、さらにシステムの充実化を試験・検討するとともに、その効果を既存の水質分析法や土壌分析法との比較を行いながら検討したい。
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