2006 Fiscal Year Annual Research Report
ファイナンス経済学における情報・知識・不確実性と合理的行動
Project/Area Number |
06F06022
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
倉澤 資成 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MARDYLA Grzegorz 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 過大な確信 / 過小な確信 / 資産価格 / ショート・ポジションの制約 / 情報到達時間の不確実性 |
Research Abstract |
三つのテーマに取り組んだ.第一の研究は,確信におけるバイアス(biases in confidence)に関連する.このテーマは,近年,経済学でも広く論じられるようになり,さまざまな不確実性のもとでの意思決定における重要性が広く共有されるようになった.特に金融市場においては,意思決定に複雑な情報獲得・処理が関連している.われわれの研究では,確信における誤差に注目し,それがなぜ生じるのか,金融市場で広く見られるのはなぜか,を理論的に明らかにした.この研究は既にdiscussion paperとしてまとめられており,フランス経済学会のConferenceなどいくつかの学会・セミナーで報告あるいは報告の予定になっている.第二も確信に関係しており,金融市場における過大な確信と過小な確信の相互作用がもたらす効果が研究テーマである。過信は人間行動の顕著な特徴として広く知られているが,過小な確信はさほど注目されてこなかった.しかし,ノイズ・トレーダーが存在する金融市場では,情報の質と現実妥当性に不確実性が存在するとき,投資家は過小な確信に陥る可能性がある.過剰と過小な確信をもつ投資家の存在と,ショート・ポジションの制約を考慮することによって,証券価格に見られる特徴のいくつか理論的に説明できる.この研究については,現在,論文にまとめている段階である,第三のテーマは,特に投機色が強い金融市場における,情報の到達時間の不確実性がもたらす効果である.ファンダメンタル・バリューに関する不確実性が基本的に重要なのは言うまでもないが,それ以外のさまざまな不確実性が,投資家の行動に大きな影響を与える可能性があり,情報の到達時間の不確実性もその一つと考えられる.この研究テーマに取りかかったのは最近であり,現在理論モデルの構築を進めている段階である.
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