2007 Fiscal Year Annual Research Report
屋久島におけるニホンザルと寄生虫を支える食物網の構造とエネルギー論に関する研究
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06F06178
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
M.A. Huffman Kyoto University, 霊長類研究所, 准教授 (10335242)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
A.D. Hernandez 京都大学, 霊長類研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | 食物網 / 寄生虫 / ニホンザル / 腸結節虫 / Oesophogostomum aculeatum / Streptopharagus pigmentatus / 屋久島 / 感染率の季節性 |
Research Abstract |
18年度に引き続き、霊長類研究所と屋久島の調査地に1ヶ月おきに滞し、ヤクシマザルの寄生虫生態学的調査を行った。調査地では、16個体のオトナメスを定期的に個体追跡して行動観察と糞の採取を行うとともに、トラップを仕掛け、サルが採食する昆虫類を捕獲した。現時点では、採取した糞サンプル96個及びその隣接群から20個(8個体)について、研究所の実験室での分析が済んでいる。これらの資料に基づいて、ニホンザルの腸内寄生虫種のダイナミクスについていくつもの新しい視点を得ることができた。一番多く検出された寄生虫の2種はStreptophargus pigmentatusとOesophagostomum aculeatumである。S.pigmentatusは、サルに感染するためには中間宿主である昆虫を通して宿主に食べられなければならない。本年度の研究では、ヤクシマザルが採食するOnthophagus lenzii(糞虫)がその中間宿主であることが明らかになった。この糞虫の活動状態を示す月別捕獲率は強い季節性を示しており、サルたちが一番多くの昆虫を採食した真夏にもっとも高くなっていた。実際、集めたO.lenziiから、この寄生虫の幼虫が見つかり、S.pigmentatusの生活環を完全に突き止めることができた。またO.aculeatumに関しても、強い感染の季節性を認めることができた。それは、雨の一番多い時期と重なることがわかった。一方、サルの行動観察によってメス間の順位関係を明らかにし、各寄生虫種の感染の度合いとサルの順位との関係を検討している。また、メスのストレスホルモン量(糞中のcortisolの濃度)を計ってストレスと順位の間の関係を調べたところ、低順位個体の方が糞中のcortisol濃度が高いことがわかった。
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