2006 Fiscal Year Annual Research Report
グローバルな経済と環境の下、環境政策と国際経済の相互支持性と相克性に関する研究
Project/Area Number |
06F06311
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
和気 洋子 慶應義塾大学, 商学部, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JUNG Woo Jong 慶應義塾大学, 商学部, 外国人特別研究員
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Keywords | 地球温暖化問題 / 重層的な国際協調の枠組み / 国際技術移転のスキーム / 環境ダンピング / 炭素税 / 偽装政策 / 国際競争力 / 副次的便益の可視化 |
Research Abstract |
本研究は、不確実性下での地球環境政策の決定プロセスとその枠組み構造を理論的かつ実証的に分析することに目的をおく。第1に、地球環境問題をめぐる不確実性およびリスクを理論的に整理し、それぞれの不確実性およびリスクに関する前提条件の下で政策・制度オプションの評価分析に関する既存研究のサーベイを行った。地球環境問題には多様な不確実性ならびにリスクが存在し、ある不確実性ならびにリスクについては科学的知見の蓄積とともに解消されつつあるが、依然として避けなれない不確実性ならびにリスクの存在が、環境政策がもたらす効果にどのようなメカニズムを通じて影響を与えるかを理論的アプローチによって検討する。第2に、環境と貿易をめぐる相互支持性と相克性に関する研究を行った。環境汚染による外部不経済がもたらす環境コストの内部化手法として炭素税に焦点を当て、炭素税導入による経済と環境影響を定量的に分析した。実証分析としてはEUの環境保全を目的とした貿易措置として炭素税を米国からの輸入財に対して適用した場合の経済と環境への影響を行った。その結果、EUの域外炭素税の導入は米国の生産額を1.3%減少し、CO2は0.9%の排出減少効果をもたらし、経済に与える影響がより大きい。しかし、このような輸入財に対する炭素税の導入は貿易措置を通じた国際競争力を高めようとする偽装政策として、GATT/WTO体制下で続いてきた自由貿易に相反する動きである。第3に、ポスト京都に向けた国際制度設計の枠組み分析である。京都議定書の発効により地球温暖化問題は実施段階に入り、EUを中心としたカーボン市場も活発な動きをみせている。そして、カーボン市場の価格変化要因としては、投機的要因、天候要因、化石エネルギーの相対価格要因などがあげられる。一方、APPの「ボトム・アップ方式」の国際協定も動き出し、重層的な国際協調枠組みとして注目される。
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