2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06F06338
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大野 公一 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LUO Yi 東北大学, 大学院・理学研究科, 外国人特別研究員
|
Keywords | ポテンシャルエネルギー表面 / 反応経路 / 遷移状態 / 超球面探索法 / 水素結合 / プロトン化水クラスター / 燃焼反応 |
Research Abstract |
分子やクラスターの構造および化学反応は、量子化学計算によるポテンシャルエネルギー表面(PES)を調べることによって理論解析できる。PESは振動の自由度と同数の変数を持つ多変数関数であり、PES上の系統的な自動探索は非常に難しい課題であった。申請者らはPES上の反応経路をエネルギーの低い方から高い方へと向かって上っていくことのできる一般的な手法(超球面探索法)を初めて開発し、PES上の反応経路ネットワークを直接辿ることを可能にした。これにより、反応経路以外の無駄な部分を計算せずに効率よくPES上を自動探索できる。本研究では超球面探索法を以下の解析に応用した。 (1)プロトン化水クラスターH^+・(H_2O)_nなどの水素結合クラスターでは、水素結合が容易に組み変わるため、温度変化に伴って構造転移が起こる。そこで、PES上を系統的に調べ、多数の安定構造の候補を探索し、それらを用いた熱力学解析を行う必要がある。これまでは、量子化学計算のPES上で安定構造の候補を効率的に自動探索する手法が存在しなかったため、十分系統的な解析はできなかった。本研究で、超球面探索法によりH^+・(H_2O)_n(n=5-8)の安定構造を探索し、それらを用いた熱力学解析を行った結果、いくつかの研究グループが別々に発表した様々な温度条件での実験結果を統一的に再現でき、各実験で観測したクラスター構造を量子化学計算に基づいて同定できた。 (2)CuDDP(cuprous dialkyldithiophosphate)は、エンジン内での燃焼反応で生じる過酸化アルキルラジカルを分解する酸化防止剤として用いられてきたが、その機構は理論的に十分解析されていない。本研究で、超球面探索法によってCuDDPの異性化および分解経路、および、CuDDPによるCH_3COOラジカルの分解経路を系統的に調べ、その反応機構を解明した。
|