2007 Fiscal Year Annual Research Report
リボソームの異常と発がん:ゼブラフィッシュを用いた解析
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06F06457
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
剣持 直哉 University of Miyazaki, フロンティア科学実験総合センター, 准教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CHAKRABORTY ANIRBAN 宮崎大学, フロンティア科学実験総合センター, 外国人特別研究員
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Keywords | リボソーム / 発がん / 胚発生 / ノックダウン / 翻訳調節 / アポトーシス / ゼブラフィッシュ / リボソームタンパク質 |
Research Abstract |
リボソームはすべての生物にとってきわめて重要なタンパク質合成装置である。リボソーム構成成分の量的変動がリボソームの機能を変化させ、細胞のがん感受性を高める可能性がある。本年度は、がん抑制遺伝子p53と相互作用することが知られているリボソームタンパク質L11(rpl11)の遺伝子を、ゼブラフィッシュでノックダウン(発現抑制)することにより、以下の点を明らかにした。 1.rpl11の発現抑制は細胞死による発生異常を引き起こす rpl11をノックダウンしたゼブラフィッシュの胚は、受精後24時間で、頭部、尾部、色素沈着などに異常がみられた。受精後4日では、頭部、眼球の発達遅滞が著しく、内臓の形成不全も観察された。タネル法によりアポトーシスを検出した結果、これらの部位で細胞死を起こしていることが明らかになった。 2.p53関連遺伝子の発現はrpl11のノックダウンにより活性化される p53により引き起こされる細胞死に関わる遺伝子の発現を半定量的PCRにより測定した。その結果、p21、bax、mdm2ともにrpl11のノックダウンにより発現の上昇が見られた。これは、rpl11の発現抑制がp53依存のアポトーシスを活性化することを示している。 3.初期胚の発生異常はp53を同時にノックダウンすることにより回復する rpl11のノックダウン胚に見られる発生異常は、p53を同時にノックダウンすることにより部分的に回復した。タネル法でアポトーシスを起こしている部位を検出したところ、同様な部位で細胞死が観察された。この結果は、アポトーシス細胞におけるrpl11とp53の相互作用を強く示唆している。 以上の結果より、リボソームタンパク質の欠損によるリボソームの異常は、p53依存のアポトーシスを引き起こすことが明らかになった。したがって、この経路の障害は発がんの重要なステップになると考えられる。
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