2007 Fiscal Year Annual Research Report
オランダのオルタナティブスクールと教育監査制度に関する比較教育学的研究
Project/Area Number |
06J00434
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
吉田 重和 Waseda University, 教育・総合科学学術院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 教育(学校)監査 / オランダの教育 / オルタナティブスクール / 全国共通学力テスト |
Research Abstract |
報告者の平成19年度の研究成果は、大きく2点に分けられる。 1点目は、オランダにおける「新たな」オルタナティブスクールの実践について、その現状と課題を明らかにした点である。オランダにおいて、公教育制度外で実践を展開することを選択しているオルタナティブスクールの代表的な存在として、イーデルヴェイス(Iederwijs)スクールがある。1990年代半ばから実践を展開させてきた「新たな」オルタナティブスクール群は、A.S.ニイルの自由教育にも似たラディカルな児童中心の教育理念に基づき運営されており、その理念に賛同する一部の保護者から熱心な支持を得ている。しかし、その学校のあり方の是非を巡っては、オランダ国内で活発な議論が起こってきていた。報告者はオランダの「新たな」オルタナティブスクール群の現状と課題を明らかにすべく、文献やウェブサイト、メールインタビューなどを活用しながら調査を行った。 2点目は、オランダにおける教育監査制度と全国共通学カテスト(通称「CITOテスト」)の現状を、オルタナティブスクールとの関係性から明らかにしたことである。これまでオルタナティブスクールの実践を脅かす「規制」のメカニズムとして同一に捉えられてきた教育監査とCITOテストであるが、報告者のインタビュー調査や文献調査により、オルタナティブスクールにとっても、教育監査は自らの実践改善の有効な手段として捉えられていることが明らかになった。その一方で、CITOテストのスコアによる学校の一元的な評価が進んでいる傾向については、オルタナティブスクールのほとんどが憂慮し社会的にも問題視されており、両者を単に「規制」のメカニズムとして同一に捉えてよいかどうか、再考の必要性があるとの指摘を行った。
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