2007 Fiscal Year Annual Research Report
環境状態-生物選択-資源の3要素の相互作用から生じる自己調節フィードバックモデル
Project/Area Number |
06J01285
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
瀬戸 繭美 Kyushu University, 理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 生態系恒常性 / 環境制御 / 数理モデル / トレードオフ / 共存 / ガイア仮説 |
Research Abstract |
本年度の研究概要 本研究では、生態系に生物が存在することによって環境状態の変動が外的撹乱から予測されるよりも小さくなることに着目し、その機序を解き明かすことを目的として数理モデルを用いた解析を行ってきた。生態学の分野において生物が物理化学的環境状態に寄与することでその状態に安定性をもたらしうることに着目したモデル研究はほとんどない。申請者は申請当初、モデル研究の拡張に際して、生物や資源の数を増やすことや生物のパラメタに進化を導入することを考えていたが、系の本質的な理解のために数学的解析が重要であることを認識し、まず2種1資源1環境系の解析を試みた。 その結果、生物が環境に影響を及ぼすことで安定な共存点が現れ、共存が生じることで環境(気温やpH)が外部の撹乱に全く依存せず一定に制御されることが数学的に示された。この結果は2007年にJournal of Theoretical Biologyに掲載された。その後、微生物培養槽モデル(ケモスタットモデル)においてシアノバクテリアとpHが相互作用関係にある系を数理モデルで検証した結果、いくつかの条件が満たされれば1種の微生物でさえもpHの安定制御効果をもたらしうることが示された(これは現在投稿準備中である)。またこの研究からは環境制御効果は外的撹乱が大きくなりすぎると一気に失われてしまい、生態系の崩壊を招く危険性をはらんでいることがわかった。人間活動による外的な環境撹乱(e.x.温暖化、酸性降下物の上昇)が大きくなる昨今、生物がどのようにこれに応答し制御しうるかを知ることは非常に重要な課題であると考えられる。
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Research Products
(7 results)