2007 Fiscal Year Annual Research Report
亜社会性昆虫モンシデムシの親による幼虫数調節機構の生理学的・生態学的研究
Project/Area Number |
06J01331
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
西村 知良 The University of Shiga Prefecture, 環境科学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 亜社会性昆虫 / ヨツボシモンシデムシ / 子育て行動 / 繁殖行動 / 資源分配問題 / 同化効率 / 幼若ホルモン |
Research Abstract |
ヨツボシモンシデムシの成虫は、幼虫のえさ資源としての小動物の死体(資源)の大きさに合わせて、幼虫数を調節し次世代成虫の大きさを一定に保つ。一方で、資源獲得では、体の大きな成虫が勝つが、野外の繁殖実験では、小さな資源では、幼虫数を調節しても資源を獲得できそうにないほどの小さな次世代成虫が多数見られた。これは行動学における最適な資源分配の理論に当てはまらない興味深い現象である。本年度はこの現象の生態的意義を詳しく調べると共に、幼虫数調節機構の生理学的なしくみを明らかにすることが目的である。 まず、野外で小さな成虫がまったく資源を獲得できないのか調べた。すると、小さな成虫でも、資源が小さい場合は資源獲得の機会があった。また、活動個体の体サイズと気温に相関があり、季節によって獲得競争が緩和される可能性があると思われた。次に、幼虫数と資源の利用効率(同化効率)の関係を調べると、幼虫数が少ないと効率が悪く、幼虫が大きく育たない可能性があった。これらの結果から、この虫の最適な資源分配問題を理論的に計算すると、常に大きな成虫を育てなければならないわけではなく、資源の大きさによっては、次世代の大きさより数を優先したほうが、資源獲得の期待値は高くなる場合があった。 また、実験室で幼虫数調節機構の生理的なしくみを調べた。成虫が資源のどの物理的要素を、大きさの指標にしているのかを調べると、資源の重さではなく体積を指標に、資源の大きさを見積もっていると考えられた。さらに、この幼虫数調節のしくみと幼若ホルモンの関係を調べるために、幼若ホルモン類縁物質・メソプレンを塗布して、繁殖行動を観察したが、メソプレン塗布の効果がみられなかったため、幼若ホルモンと幼虫数調節機構との関連は明らかに出来なかった。しかし、メソプレンが表皮から体内にどの程度浸透しているか分からないため、異なる方法で確かめる必要がある。
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Research Products
(2 results)