2006 Fiscal Year Annual Research Report
植物と植物を利用する生物群集の共進化-植物誘導反応の可塑性に注目して-
Project/Area Number |
06J02570
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
塩尻 かおり 京都大学, 生態学研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 植物誘導反応 / 揮発性物質 / セージブラッシ / 植物間コミュニケーション |
Research Abstract |
植物は植食者の食害を受けると、その植食者に対して特異的な誘導反応を起こす。その反応の一つに揮発性の情報化学物質の生産があり、その物質が植食者の天敵(捕食者や捕食寄生者)を誘引すること、また近隣の植物に作用し食害を受けていない植物の誘導反応を誘発することが報告されている。 本年度はとくに、この揮発性物質が隣接する植物に作用するという現象(植物間コミュニケーションと呼ばれている)に注目し、セージブラッシ(Artemisia tridentate)を用いて野外操作実験を行った。以下に本年度の成果を列挙する。 1)処理を行う時期によってコミュニケーション作用が異なるかを明らかにするため、雪解け後(5月下旬)、春(6月)、初夏(7月)の時期に処理を行い、9月の後半に隣接する個体の食害状況を調べた。その結果、5月下旬の処理のみが有効であることが明らかになった。 2)これまでに、揮発性物質が著しく異なる個体が存在していることが分っていたので、セージブラッシの血縁関係と揮発性物質の調べるため、10m×10mのコドラートをはってマッピングならびに、遺伝子解析と揮発性物質の分析をおこなった。近隣個体は遺伝子間距離が近いことが分った。揮発性物質に関して分析は終了したので、実際の距離と揮発性物質の類似度、また、遺伝子類似度と揮発性物質の類似度の関係について、データ解析を行っているところである。 3)血縁関係のある個体の揮発性物質は血縁関係のない個体のものよりも、誘導反応を引き起こしやすいかを調べる野外操作実験を行った。今年度、この実験の処理をおこなったのが、6月以降であったためか差がでなかった(コントロールと比べても)。来年度は雪解け後すぐに処理をおこない、同じ実験設定で結果を得る予定である。
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Research Products
(6 results)