2007 Fiscal Year Annual Research Report
物質循環と生物多様性の共役的発展を駆動する生物種間相互作用の進化的変化
Project/Area Number |
06J02572
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三木 健 Kyoto University, 生態学研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 生物多様性 / 生態系プロセス / 複雑適応系 / 海洋生態系 / 炭素循環 / 鉛直混合 / 微生物群集 / 地球温暖化 |
Research Abstract |
生物群集の進化的変化に注目するという研究課題に沿って以下の理論的研究を遂行した。 「微生物群集内の複雑な相互作用が炭素の無機化過程に及ぼす影響を予測するための数理モデルの構築」 海洋においては、多様な有機物が食物連鎖の中で生産された後、細菌群集によって無機化されることによって炭素循環が完結する。従来、多様な有機物が無機化される過程において、細菌・ウイルス・小型動物プランクトン間の複雑な相互作用が持つ影響については十分検討されてこなかった。そこで本研究では、ウイルスの複雑な生活史およびウイルスと動物プランクトンとの間接的な相互作用を考慮した数理モデルを構築し、その挙動を解析した。その結果、これらの要因が多様な有機物がバランスよく無機化されることに貢献している可能性を理論的に示すことができた。 「海洋の鉛直混合過程が細菌群集の時空間動態と炭素循環に与える影響を予測するための数理モデルの構築」 海洋においては海洋の混合などの物理過程と生物生産・分解などの生物過程とが複雑に絡み合って生態系が維持されている。これまでの研究で、物理過程が有機物の生産過程およびそれを担う生物群集に与える影響については十分に理解が進んできた一方で、物理過程が有機物の分解過程およびそれを担う生物群集に与える影響については十分な理解が進んでこなかった。そこで、海洋の表層と深層からなる2層モデルを構築し、水の鉛直混合が細菌群集の動態と炭素の鉛直輸送に与える影響を調べた。その結果、特に一次生産の季節変動が大きいときには、鉛直混合によって深層から細菌が表層に供給され、それが群集組成の変化を促進して、海洋表層での有機物の無機化効率を上げることがわかった。この研究は米国・プリンストン大学の数理生態学グループとの共同研究である。
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