2008 Fiscal Year Annual Research Report
X線精密分光による前主系列星における高エネルギー活動の起源の解明
Project/Area Number |
06J03210
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
兵藤 義明 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 特別研究員DC1
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Keywords | X線天文学 / 中性子星連星系 / すざく / ダスト散乱 |
Research Abstract |
低質量中性子星連星系(LMXB)はエクリプスとディップという2つのX線強度減少状態が存在することが分かっているが、その物理的解釈は様々であった。Diaz Trigo et al.(2006)は6個のLMXBを系統的に解析し、ディップは降着円盤コロナ中のプラズマによる吸収で説明できる、と主張した。 我々は「すざく」衛星を用いて、アウトバースト状態にあるLMXB、AXJ1745.6-2901のX線分光観測を行った。X線CCDカメラによって得られた高精度スペクトルを解析したところ、4本(ヘリウム状鉄、水素状鉄、ヘリウム状ニッケル、水素状ニッケル)の吸収線を初めて発見した。また、エクリプスの直前のディップ状態を初めて検出し、さらにダストの空間分布をモデル化した上でエクリプス中の放射がダスト散乱によってよく表されることを明らかにした。エクリプス中のスペクトルからは深い中性鉄の吸収端がはっきりと検出された。これはDiaz Trigo et al.(2006)のシナリオでは説明できない。ディップは一般にエクリプスの直前に現れることからもディップ中のスペクトルは降着円盤コロナよりも(冷たい)降着流による吸収である、と考えるべきである。LMXBを含む多くのX線連星系は伴星からの降着によって放射エネルギーを得ている。ディップ中のスペクトルに現れる吸収を用いて降着物質の物理的パラメータを観測的に求めることができるだろう。
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