2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J03402
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷川 博信 京都大学, 化学研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 強磁性細線 / 磁壁 / 磁壁の電流駆動 / ナノ秒パルス / MFM(Magnetic Force Microscopy) |
Research Abstract |
我々は、強磁性細線における磁壁の電流駆動実験を行ってきた。これまでの研究では、磁壁電流駆動を行うためのパルス電流の幅は数マイクロ秒にとどまっていたが、近年、数ナノ秒のパルス電流を用いた磁壁電流駆動実験の報告がなされている。そこで本研究では、NiFe細線中の磁壁をナノ秒オーダーのパルス電流によって駆動し、その挙動をMFM(Magnetic Force Microscopy)を用いて直接観察した結果について報告を行う。 電子線リングラフィーとリフトオフ法により、Si/SiO_2基板上に強磁性細線(Ni_<81>Fe_<19>)を作製した。NiFe細線の厚みは30nmである。パルス電流の高周波成分の反射を軽減するために、試料抵抗は50Ωになるように強磁性細線を並列に並べた。磁壁の運動方向を左右どちらにも移動可能にするため、細線に左右対称なくびれを作製した。SEM(ScanningElectron Microscopy)を用いて、くびれた部分の細線幅は360nm,太い部分の細線幅は495nm,2つのくびれ間の距離は940nmと決定した。 作製した試料にパルス電流J=1.4×10^<12>A/m^2、パルス幅7nsのパルスを印加し、その前後で無磁場下においてMFM観察を行った結果、磁壁が電流と逆方向に移動する確率はほぼ50%であり、それ以外は電流と同方向に移動した。この原因としては、パルス印加時の試料温度の上昇によって細線中の磁化の揺らぎや飽和磁化Msの減少が挙げられる。パルス幅を5〜10nsと変化させて電流密度とそのときの試料抵抗をプロットすると、電流密度が増大するに従って、試料抵抗も増大する傾向が見られた。また、各パルス幅(5,7,9ns)においてのしきい電流密度での試料抵抗はほぼ同じ値を示しており、同じ温度で磁壁の電流駆動現象が起きていることがわかった。したがって試料温度上昇の効果が寄与していることがわかった。このときの温度を見積もると、550〜560Kと室温から〜260K増大していた。
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