2006 Fiscal Year Annual Research Report
光合成における励起エネルギー捕獲・初期固定の理論的研究:酸素発生と非発生型の違い
Project/Area Number |
06J03812
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
斉藤 圭亮 筑波大学, 大学院数理物質科学研究所, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 光合成 / 電子移動 / 励起エネルギー移動 / 中間分子媒介 / スピン三重項状態 / クロロフィル / 電荷分離 / 電荷再結合 |
Research Abstract |
緑色植物および藻類の光合成における光化学系II(PS2)の反応中心(RC)は,紅色細菌RCと共通の祖先を持つけれど,PS2RCには,紅色細菌RCではみられない特徴的過程がいくつかある.これらの違いを明らかにするため,次の課題の解明を行った. 1.PS2RCがコアアンテナから色素励起エネルギーを捕獲することにより,中心色素対と隣の色素間に電荷分離状態が形成される.PS2では水から電子を引き抜く必要性から中心色素対励起状態のエネルギーが高いにも拘わらず,この電荷分離は起こる.そこにはどのような機構が働いているのかを明らかにする. 2.PS2RCでは,電荷再結合によりスピン三重項状態がアクセサリクロロフィルと呼ばれる色素上に出来る.この色素は紅色細菌RCの場合とは異なる.この違いはPS2RCにおける色素エネルギー特異性に起因していると考えられる.この事を明らかにする. その結果,上記の課題に対応して次の成果が得られた. 1.電荷分離状態の形成には中心色素対励起状態を経由する必要があるが,この状態を作るために必要なエネルギーは熱エネルギーに比べて十分高いので,実の状態として実現されない.ここには,中心色素対励起状態を量子力学における虚の中間状態として利用する新奇な励起エネルギー捕獲・初期固定機構が働いていることが分かった. 2.紅色細菌RCでは,電荷分離の逆反応によってスピン三重項状態が出来る.一方,PS2RCでは,電荷分離の逆反応という機構の他,電子とホールが協奏的に移動して直接アクセサリクロロフィル上に三重項状態が出来る機構がある.このような機構の違いは,PC2RCでは中心色素対のエネルギーがアクセサリクロロフィルの励起エネルギーに比べて高いために生じていることが分かった.
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