2007 Fiscal Year Annual Research Report
光合成における励起エネルギー捕獲・初期固定の理論的研究:酸素発生と非発生型の違い
Project/Area Number |
06J03812
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
斉藤 圭亮 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 光合成 / 電子移動 / 励起エネルギー移動 / 中間分子媒介 / スピン三重項状態 / クロロフィル / 電荷分離 / 電荷再結合 |
Research Abstract |
緑色植物および藻類の光合成における光化学系II(PS2)の反応中心(RC)は,紅色細菌RCと共通の祖先を持つけれど,PS2RCには,紅色細菌RCではみられない特徴的過程がいくつかある.これらの違いを明らかにするため,次の課題の解明を行い,それぞれ次に述べる成果を得た. ・PS2RCと紅色細菌RCでは,電荷再結合によりスピン三重項状態ができるが,両者でできる色素が異なる.この違いはPS2RCにおける色素エネルギー特異性に起因している事を明らかにした:紅色細菌RCでは,電荷分離の逆反応によってスピン三重項状態が出来る.一方,PS2RCでは,電荷分離の逆反応という機構の他,電子とホールが協奏的に移動して直接アクセサリクロロフィル上に三重項状態が出来る機構がある.このような機構の違いは,PC2RCでは中心色素対のエネルギーがアクセサリクロロフィルの励起エネルギーに比べて高いために生じていることが分かった. ・PS2RCでは,スピン三重項状態のできる色素の近くに(紅色細菌では三重項状態を消す役割を担っている)カロテノイドが存在しないにも拘わらず,三重項状態が速やかに消される.PS2RCは(活性酸素を発生させるので有害な)スピン三重項状態をどのようにして消滅させているのかを明らかにした:この三重項状態消滅機構は,フェオフィチンとキノン間の電子移動により媒介される.
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