Research Abstract |
インターネットの長期的利用が現実生活に及ぼす影響について,自己および攻撃性の観点から検討を行った。調査と実験の両面から検討を行い,以下の2点を明らかにした。 1.電子掲示板やソーシャルネットワーキングサイト上で展開されているコミュニティを対象とし,そこでどのように知識・情報の共有がなされているかについて検討した。同時に,コミュニティでの知識・情報の共有が,現実生活における自尊心,実際の問題解決行動に及ぼす影響についても検討した。心身の疾患や人間関係の問題を扱うコミュニティの利用者を対象として調査を実施し,どのような内容について共有しているか,それによってどのような影響が生じたか,などについて尋ねた。その結果,(1)コミュニティでは,情報・知識の共有のみならず,自身が抱える問題・悩みそのものについての共有,将来への希望・目標の共有,怒り・不満の共有もなされていること,(2)希望・目標の共有と怒り・不満の共有は,現実生活における自尊心を高めていたこと,(3)実際の問題解決行動を促進するのは,知識・情報の共有ではなく,問題・悩みの共有であることが示された。 2.インターネットの長期的利用が,情報の処理・解釈の過程に及ぼす影響について,個人が運営するウェブログに着目して検討した。具体的には,まずウェブログ執筆者に対して"自分自身はどのような人物であるか"について自己評定を求めた。その後,別の実験参加者にそのウェブログの閲覧を求め,"この執筆者はどのような人物であるか"という人物評定を求めた。そして最後に,執筆者に抱いた感情について尋ねた。その結果,(1)長期にわたって執筆しているほど,執筆者の自己評定と閲覧者の評定との乖離が小さくなること,(2)執筆者の,インターネット上での情報公開に伴う危険性に関する意識が低いほど,閲覧者は執筆者に対して攻撃的な感情を抱きやすいことが示された。
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