2006 Fiscal Year Annual Research Report
インフルエンザウイルスのゲノム機能により規定される細胞特異性及び宿主域の解析
Project/Area Number |
06J03920
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
川口 敦史 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | インフルエンザウイルス / RNAポリメラーゼ / 宿主因子 / 試験管内RNA合成系 |
Research Abstract |
これまでのインフルエンザウイルスに関する生化学的解析から、ウイルス遺伝子の転写およびウイルスゲノムの複製には、宿主因子が必須であることが明らかにされた。特に、ウイルスゲノムの複製反応は、宿主因子への依存性が高く、試験管内RNA合成系において、ウイルス粒子より調製されたウイルスRNAポリメラーゼ複合体のみでは、ウイルスゲノムの複製反応は観察されない。また、子孫ウイルス粒子の産生には、効率の良いウイルスゲノム複製が必須であり、インフルエンザウイルス感染に対して非許容な細胞では、ウイルスゲノム複製量の低下が観察される。しかし、ウイルスゲノムの複製機構に関しては、遺伝学を用いた報告があるのみであり、複製反応の分子機構および細胞特異性に関しては未だ明らかにされていない。そこで本研究では、インフルエンザウイルスゲノム複製の分子機構およびその反応を支える宿主因子によるインフルエンザウイルスの細胞特異性および宿主域の決定機構を明らかにすることを目的とした。 本年度は、インフルエンザウイルスのゲノム複製を促進する宿主因子、Influenza virus REplication Factor-1(IREF-1)の同定に成功した。IREF-1を添加することにより、試験管内ウイルスゲノム複製が再現され、IREF-1の標的となるウイルスタンパク質はウイルスRNAポリメラーゼであることを明らかにした。RNAi法を用いて、IREF-1の発現量を低下させた培養細胞では、ウイルスゲノム複製活性が低下した。さらに、IREF-1により、RNA合成伸長反応途中のウイルスRNAポリメラーゼと新規合成鎖の相互作用が安定化され、ウイルスRNAポリメラーゼのprocessivityが促進されることを明らかにした。来年度は、細胞種間、組織間、および宿主間でのIREF-1の発現量およびその活性の違いを検討し、IREF-1によって規定される細胞特異性、組織特異性および宿主域について解析を行っていく予定である。
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