2007 Fiscal Year Annual Research Report
海水中硝酸の酸素同位体異常定量法開発と海洋窒素循環系への応用
Project/Area Number |
06J04415
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川口 慎介 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 三酸素同位体 / 硝酸 / 海洋窒素循環 / 海底熱水活動 / 安定同位体 |
Research Abstract |
三酸素安定同位体組成定量にあたって、東京大学海洋研究所に敷設済の安定同位体質量分析計について、ファラデーカップの抵抗の付け替え工事を行い、酸素-17の同位体分析に不可欠なm/z33の検出感度を格段に上昇させた。また、抵抗変更後の条件下で、O_2の三酸素同位体組成定量の測定諸条件の検討実験を行った。今後はO_2の三酸素同位体定量精度の検討を行う予定である。 一方、上記O_2測定に付随して行っているH_2の海水中での挙動の定量は、窒素固定の定量的評価の一助となる可能性を持つ。窒素固定は、海洋表層への新窒素流入源であるため、海洋窒素循環系を定量的に評価するためには定量すべき過程である。そこで、本研究では海水中のH_2の濃度とδDを定量する手法を構築し、所蔵している海底熱水試料中のH_2の濃度およびδDを定量した。定量したδD値は、水-岩石反応やマントル由来のH_2では説明できない値であったため、生物活動によるH_2の生成が有意に起こっている可能性を示唆している。窒素固定反応は生物によるH_2生成過程として知られており、本研究で得られたH_2のδD値を説明することも可能である。この事実はH_2のδD値定量が窒素固定反応の有無の有意義なトレーサーとなりうることを提案している。 また、本研究では、安定同位体組成定量法の開発と並行して、表層海水・深層海水の試料採取を行った。NTO7-11航海およびNTO7-13航海において、沖縄トラフ域に存在する伊平屋北熱水と南奄西海丘熱水域から高温噴出熱水および生物相内に染み出る低温熱水を採取した。硝酸の三酸素同位体分析用とH_2などのガス分析用にそれぞれ異なったマナーで採取を行った。KT-08-4次航海では、熱水プルーム中で変質していく様子を把握するために、プルームの平面分布を描くように深層水の採取を行った。これらの試料について、次年度に分析を行う予定である。
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Research Products
(3 results)