2006 Fiscal Year Annual Research Report
量子揺らぎを考慮した揺動散逸動力学による重イオン核融合反応及び核分裂反応の研究
Project/Area Number |
06J05005
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鷲山 広平 東北大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 超重元素合成 / 重イオン核融合反応 / 複合核形成 / 揺動散逸動力学 / 量子揺らぎ |
Research Abstract |
本研究の目的は、重イオン核融合反応を用いた超重元素合成反応を揺動散逸動力学に基づいて理論的に記述することである。その際にクーロン障壁近傍の低エネルギー反応で重要な量子揺らぎを考慮し、その効果を明らかにすることである。今年度は以下の内容で研究を行なった。 1.昨年度までに我々が開発した量子揺らぎを考慮した揺動散逸動力学(Langevin方程式)の模型(量子拡散理論)を、核融合反応の時間発展を記述する集団座標として、融合する原子核同士の重心間距離に加え質量分配度(全体の質量を2つの原子核に分配する自由度)を考慮できる多自由度の模型に拡張した。 2.重イオン核融合反応過程において、クーロン障壁を越えて接触した原子核同士が再分裂(quasi-fission)せずに球形の複合核を形成する確率(以下複合核形成確率)を我々が開発した量子拡散理論による計算と量子揺らぎの効果を含まない計算を行ない比較した。入射系が質量対称な^<100>Mo+^<100>Mo,^<110>Pd+^<110>Pd系及び非対称な^<48>Ca+^<244>Pu,^<70>Zn+^<208>Pb系を解析した。質量対称な入射系では、複合核が低い温度のとき(1MeV以下)、量子揺らぎの効果で複合核形成確率が増幅することを明らかにした。一方、質量非対称な入射系では、量子揺らぎの効果で複合核形成確率が抑制されることを明らかにした。これは、原子核同士が接触した時の運動エネルギーに依存した。 3.^<48>Ca+^<244>Pu系におけるquasi-fissionの分裂片の質量分布に対する量子揺らぎの効果を調べた。質量分布において^<208>Pb近傍の分裂片に対応するピークに有意な量子揺らぎの効果が見られた。
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