Research Abstract |
19年度は,スラブ内地震の発生機構への理解が一層深まった.報告者は,脱水不安定説というスラブ内地震の発生原因に関する仮説を検証するため地震活動の特徴を詳細に調べることにより行っている.今年度は,昨年度に行ったDouble Difference震源決定法による震源決定結果のさらに詳細な検討を行い,2つの成果をあげた.まず.スラブ内地震のうち東北地方下でおける二重深発地震面上面中の過去に中・大規模地震が発生している場所は,(1)周辺のスラブ地殻下部と比較して,定常的に地震活動が活発な場所であること,(2)それらの約深さ60km同じ深さの,スラブモホ面近傍という,ほぼ同じ温度圧力条件下で発生していることをみつけた.(2)の観測事実は,スラブの中において同じ相境界条件が成立したことにより地震が発生していることを意味しており,上記で述べた脱水不安定仮説の成立を髣髴させる結果である. また,報告者は,これまでの過去の研究で注目されてこなかった二重深発地震面間の地震活動に注目し,北海道・東北地方下の太平洋スラブ内全体の地震活動の発震機構解(震源メカニズム解)の特徴を詳細に調べた.その結果,(1)発震機構解のパターンは2パターンにわかれ,そのパターンが変わる場所はプレート表面からの深さできまり,(2)東北地方下では二重深発地震面状面と下面のほぼ真ん中で,北海道では二重面上面近くでパターンが変わることを示した.(現在これらの結果をまとめ,論文投稿準備中である.) 報告者の研究成果は,地震学的解析による結果を近隣の学問分野の視点も入れて検討した結果得られたものであり,学会発表・雑誌における発表をとおして,国内外の地震学分野以外の幅広い地球科学者に認識してもらうことが出来た.特に米国地球物理学連合秋季学会(学会発表1)では世界的な岩石学者であるイエール大学の唐戸教授などと議論を行い,成果を高く評価された.
|