2006 Fiscal Year Annual Research Report
多核金属ユニットを基盤としたラダー型金属錯体の合理的設計と新奇物性探索
Project/Area Number |
06J05254
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川上 大輔 東北大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ハロゲン架橋金属錯体 / ラダー型錯体 / 混合原子価 / 電荷移動エネルギー |
Research Abstract |
本申請研究では、一次元電子系を形成する擬一次元ハロゲン架橋金属錯体(MX錯体)を連結し、ラダー系へと次元拡張する事による新奇物性の探索を最終目的としている。これまでに架橋配位子として2,2'-ビピリミジン(bpym)を用いた計4種の混合原子価ラダー型MX錯体を報告してきた。しかしこの系は、1酸化時にビピリジン環への置換反応が付随する、2構成要素であるキャップ配位子・対イオンの置換に制限がある、などの問題があり、合成、誘導体への発展が困難であった。そこで本年度では、分子設計に対しより柔軟性の高い系の開発を目指した。これにより、ラダー系の系統的評価が可能になると考えられる。指針としては、特に問題1に焦点をあて、架橋配位子に酸化反応に安定な飽和型テトラアミンである1,2,3,4-テトラアミノブタン(etab)を用い、ラダー型MX錯体の合成を検討した。その結果、etab系は酸化反応に安定であるだけでなく、架橋ハロゲン、キャップ配位子、対イオンをほぼ自由に置換する事が可能であり、ラダー型MX錯体の系統的研究に非常に有用な系である事が分かった。さらに、このetab系の発展系として、etab内にスペーサーとしてベンゼン環を導入した配位子を用いた系でも、容易に誘導体を得る事が出来た。つまり、金属との配位結合サイトが飽和型であれば、ほぼ自由にラダー型MX錯体の合成が可能であるという設計指針を得た。また、吸収スペクトルから見積もられたラダー型MX錯体の電荷移動エネルギーは、連結鎖間距離の増加に伴い小さくなると言う新たな知見が得られた。これは、電荷移動が鎖間のクーロン反発に依存している事を示唆している。今後は、得られた設計指針、電荷移動挙動の構造依存性の知見を再び分子設計へとフィードバックし、中心金属をパラジウム、ニッケルへと展開する事で、光応答型物性発現、スピンラダー錯体の開発に着手する。
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