2008 Fiscal Year Annual Research Report
多核金属ユニットを基盤としたラダー型金属錯体の合理的設計と新奇物性探索
Project/Area Number |
06J05254
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川上 大輔 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ハロゲン架橋金属錯体 / ラダー系 / 混合原子価 / 電荷移動吸収帯 |
Research Abstract |
本申請研究では、一次元電子系を形成する擬一次元ハロゲン架橋金属錯体(MX錯体)を連結し、ラター系へと次元拡張する事による、新奇物性の発現を最終目的としている。これまでに架橋配位子の異なるbpym系、etab系、phdien系、dapa系の四種類の混合原子価(Pt^<II>-Pt^<IV>)MX-Ladder型錯体の合成に成功して来た。また、bpym系に関しては、構成要素の一部を変換するだけで、基本骨格を保ったまま二種類の電子基底状態(1;はしごのrung方向の価数が揃ったIP-CDW相、2;はしごのrung方向の価数が逆位相のOP-CDW相)を作り分ける事が出来ると報告してきた。しかし、本系のOP-CDW相の化合物では(その価数配列を決定する直接的な方法がなく、結晶構造から推定するのみに留まっていた。そこで本年度の研究では、この電子基底状態が曖昧であった化合物に対し、固体のCP-MAS^<13>CNMRを測定する事で、基底状態の解明を行った。多結晶サンプルに対し、架橋配位子の炭素に着目してCP-MAS^<13>CNMRを測定した結果、OP-CDW相とIP-CDW相を明瞭に識別する事が可能である事が分かった。その結果はこれまで予想していた電子状態と一致していた。つまり、MX-Ladder型錯体の電子基底状態を決定する手法として、CP-MAS^<13>CNMRが有力であると言える。また、電子基底状態が同定された事により、電荷移動吸収帯の分裂、フェムト秒時間分解発光分光で観測される、従来の一本鎖MX型錯体では観測されない特異な発光挙動が、MX-Ladder型錯体の電子基底状態に依存する事を証明する事が出来た。また、この様な電子基底状態に依存した物性の変化は、d-p-π型拡張パイエルス・ハバードモデルを用いた理論的な解釈によっても裏付けられた。これらの結果から、bpym系のMX-Ladder型錯体は、MX鎖を連結する事により新たな電子状態を形成し、特に光励起状態において、二本の鎖が相関した新奇物性を発現する事が確かめられた。本研究の最終目標である、MX-Ladder系に特異の物性発現に成功したと言える。
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