2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J05392
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
今井 上 Aoyama Gakuin University, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 平安朝文学 / 源氏物語 / 若菜巻 / 和歌 |
Research Abstract |
源氏物語のいわゆる第二部、若菜巻以降の世界は、主人公光源氏が相対化、矮小化されていく過程であるとの評価が、これまで広くなされてきた。しかし物語のどのような局面に、そうした源氏の相対化を指摘するかとなると、論者によってまちまちであり、学会でも統一が取れているとは言いがたい。 今年度に発表した研究論文においては、そうした今日の研究状況の混乱や、用語の未整理をただすべく、先行研究の弱点や問題点を整理し、光源氏の相対化ということが、どのような問題に即して論じられるべきか、源氏物語第二部の物語についての研究を今後どのような方向に進展させてゆけばよいか、共通の議論がなされるための基盤を整備した。 具体的には若菜巻以降の物語において、光源氏がどのような呼称で呼ばれているか、「院」、「おとど」などの使い分けにどのような法則性があるかを、収集した用例から帰納し、史上例を見ない「准太上天皇」と呼ばれる身分がいかなるものとして描かれてゆくのか、その内実を明らかにした。 そのことは紫上、女三宮といった、その他の登場人物たちの位置づけを明らかにすることにもつながる。ともするとこれまでの研究は、紫上が律令条文に言うところの「正妻」か「妾」か、女三宮の六条院入りは、「降嫁」か否か、といった二者択一論に陥りがちであった。その限界性を指摘し、それらを「境界的存在」としてみることの重要性を提案した。 また柏木の物語を織り成す言葉の働きについて整理し、そこに神仏に関わる言葉が集中して見られることを指摘した。作中人物の心理的必然を描きこんでゆくといった手法とは、また別の、和歌的表現などの連なりが、物語の筋を決定してゆく、源氏物語ならではのあり方を析出し、近代小説とは異なる、古代の物語についての見方について提案した。
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Research Products
(1 results)