2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J05930
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
酒井 智宏 Keio University, 文学部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | トートロジー / 譲歩節 / 事実的解釈 / メタ言語的解釈 / レトリック / 条件文 |
Research Abstract |
本年度の成果は次の4点である。第一に、譲歩節を伴うトートロジー「PでもXはXだ」はが持つ三つの伝達情報、「属性Pを持つXもXとして扱われるべきだ」(特定のXの処遇)、「特定のXが属性¬pを持つ必要はない」(特定のXのあるべき姿)、「属性P/¬PはXの定義に含まれるべきではない」(カテゴリーXの定義)をトートロジーの解釈スキーマと譲歩文の解釈スキーマの合成により構成的に導き出し、これらの伝達情報のいずれをもトートロジーの意味論に組み込む必要がないことを示した。第二に、トートロジーの事実的解釈「XというものはすべてXとしての性質Qを持つ」とメタ言語的解釈「Xの定義に属性Pに関する情報を含めるのは誤りだ」が互いに独立であることを示し、単一のスキーマと異なる文脈情報の相互作用からこれらの解釈を導き出した。事実的解釈とはカテゴリーXからその特定の成員に属性が転送されることにより生じる解釈であり、メタ言語的解釈とはXの特性の成員が持つ属性に基づきカテゴリーxの定義属性が部分的に計算されることにより生じる解釈である。第三に、並列型トートロジー「XはX、YはYだ」が恒真命題を表しつつそれ自体の情報価値を持つという事実を、恒真的な同一性コネクターの使用が有意味な種・個体コネクターの関連性の否定を伝達するというメカニズムにより説明した。並列型トートロジーは「XとYを同じように扱うべきだ」という対話者の主張に反論するためのレトリックの一種であり、領域間結合に基づく他のレトリックと本質的な差はない。第四に、条件文がある種の結論を導くための論拠として用いられることに注目し、これを条件文の意味論的定義とする言語内論証理論の分析の問題点を指摘し、自然言語の意味論には文が伝達する命題と言語外文脈情報とが書き込まれる意味表示が不可欠であることを示した。
|
Research Products
(9 results)