2006 Fiscal Year Annual Research Report
雄が4つの繁殖戦術を持つタンガニイカ潮産魚類の代替戦術と精子競争に関する研究
Project/Area Number |
06J07328
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
太田 和孝 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | シクリッド / Telmatochromis vittatus / 代替繁殖戦術 / 精子競争 / 雄間競争 |
Research Abstract |
申請者は、タンガニイカ湖に生息するカワスズメ科魚類Telmatochromis vittatusの雄の精子形質について調査を行った。本種は、雄に4種類の代替繁殖戦術を持ち、それゆえ雄間の複雑な関係が見られる。本種において最も特徴的な繁殖戦術は「乗っ取り戦術」であり、この雄は巣を防衛する「なわばり雄」が雌とペアで繁殖しているところに侵入してきて、力ずくでなわばり雄を追い出し、その後の産卵を独占する。それゆえ、なわばり雄にとって乗っ取り雄の存在は大きな脅威であり、可能な限りこの雄の侵入を避けるべきである。 申請者は、この乗っ取り雄がなわばり雄の生産する精子に対してどのような影響を与えるのかを調べた。行動観察は、隣接する巣から離れている巣ほど乗っ取り雄に侵入されにくいことを示し、そして実験によってなわばり雄はそのような隣から離れた巣をめぐって競争することを示した。その結果、小さく弱いなわばり雄ほど隣から近い巣を保持する。なわばり雄は乗っ取り雄によって産卵から追い出された後は、スニーカーとして繁殖に参加しようと試みる。スニーカーとは雌とペアで産卵できない雄が、ペア産卵中の雄の周りに集まって、なわばり雄のすきを突いて瞬間的に産卵中のメスに向かって飛び込み精子を放出し、受精の獲得を試みる雄のことである。本種では、最も小さい雄によって採用戦術であるが、なわばり雄は乗っ取られた後は、これらの雄に混じって受精を試みる。申請者は、乗っ取り雄の侵入を受けやすい巣にいる場合、受けにくい巣にいるなわばり雄と比べて、寿命の長い精子を生産することを発見し、これは小さいサイズのスニーカーの精子と同質のものであった。つまり、なわばり雄は乗っ取られる危険性が高い場合、スニーカーになりやすいために、スニーカーに適した精子を生産することを示している。現在、さらに精子の質を多角的にみるために精子の速度や運動性のビデオ解析を行っている最中である。
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Research Products
(1 results)