2006 Fiscal Year Annual Research Report
葉身の通導抵抗を決定する葉身の形態的特徴に関する生理生態学的研究
Project/Area Number |
06J08560
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
種子田 春彦 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 通導コンダクタンス / 葉の発生 / 導管の発生 / 水利用効率 / 物質分配 / 形態形成の規範 |
Research Abstract |
(1)High pressure flow meterの組み立てと葉身の通導抵抗の測定 High pressure flow meter(以下HPFM)は,水を通しにくい器官の水輸送能力を測定する機器として使われている.HPFMは高価な機器であるが,これを自作し,複数のHPFMを用いてより迅速な葉身や根系における通導抵抗の測定を可能にした.そして,つる植物のクズや先駆的植物であるアカメガシワを使って,同じ光条件下で生育した葉の葉身が葉齢や葉面積の影響を受けずほぼ同等の面積あたりの通導コンダクタンスを維持することを明らかにした. (2)葉脈内の導管の配列の形成パターン 葉脈は、長距離輸送を担うため、水を葉身全体に行き渡らせる機構として重要になる.葉脈における水輸送能力は導管の直径の分布に左右される.私は葉身サイズに対応した導管形成が再現性よく行われるメカニズムとして,葉脈内にある木部の始原細胞が葉肉細胞の数を感知して作るという仮説を提唱した.実際にダイズを用いて発生途中の葉の葉身や主脈の一部を切ったときには、できあがる導管の数はほとんど変わらないが直径が小さくなることを確認した.今後は,葉の発生過程を制御し,導管の直径を定量化できる方法を考案してさらにこの仮説の検証を行う予定である. (3)水輸送に関する最適な根、茎、葉への物質分配 HPFMを用いて葉,茎,根の3つの器官の幹重量,通導コンダクタンスの分布を実測した.これらの実測データを用いて、水輸送だけが生産を制限するときの生産速度を最適にする物質分配を計算した.根への投資量や通導コンダクタンスの割合は,実測値と同様に小さくてもよいことが明らかになった.茎では,実測値よりも測定値がちいさい方がよく,葉では、より多くの葉面積をつけるべきであることが予測された.これらの実測値からのズレは,シュート/根比では窒素経済によって,茎への投資量は力学的安定性を維持のために作られていると推測できた.
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