2006 Fiscal Year Annual Research Report
同時代世界における「貧しさ」の人類学-東インドネシア、クパンの廃品回収人の生活誌
Project/Area Number |
06J08729
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森田 良成 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 周辺世界 / 貧困 / 廃品回収 / 資本主義への包摂 / ティモール / 東インドネシア |
Research Abstract |
本研究は、東インドネシア、西ティモールの都市クパンにおいて廃品回収労働に従事する出稼ぎ農民の生活から、今日の同時代世界における貧困のあり方について明らかにすることを目的としている。 廃品回収人たちは、村と町という二つの世界の間を、とりわけ、村におけるトウモロコシの栽培を中心とした自給経済と、町における、集めた廃品をジャワ人のボスに売ることで貨幣を得るという市場経済という二つの経済の間を橋渡しする。 彼らの廃品回収労働は、彼らが扱う廃品がかつて商品であったとき、生産や流通の段階において重視されていただろう価値とは相容れない、あまりに「非効率的」な仕事ぶりを特徴としている。都市の経済に参入し、インドネシア全土に広がる廃品回収ビジネネットワークの末端にたしかに組み込まれながらも、彼らは依然として資本主義のハビトゥスを内化させることはない。 これまでのインフォーマルセクターの研究においては、都市下層に生きる人びとの仕事ぶりを「ブリコラージュ」と指摘するに留まる傾向が見られた。そこで人びとは、二つの経済の齟齬を軽々と乗り越えて縦横無尽に行き来するかのような、「したたか」で「戦略」に満ちた人びととして描かれがちであった。本研究が示すのは、そうではなくて、二つの経済の齟齬が、純粋な身体能力や農民らしい時間の観念といったものからなる彼らの「消極的な耐久力」によって、強引に架橋される事例である。 今後はさらに、「彼らの見方」から都市と現代の世界を見ていく。最終的には、周辺世界における資本主義への包摂というテーマに対して、新しい視点を加えたい。
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