2008 Fiscal Year Annual Research Report
自己組織能を有する液晶性有機半導体材料の創製と機能開拓
Project/Area Number |
06J09863
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安田 琢麿 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 助教
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Keywords | 液晶 / 自己組織化 / 有機半導体 / π共役分子 / オリゴチオフェン / レドックス / 光機能 / ソフトマテリアル |
Research Abstract |
液晶のもつ異方性や動的特性を利用した機能性ソフトマテリアルの構築が近年注目を集めている。本研究では、π共役分子のもつ優れた電子・光・レドックス機能と液晶の特性を融合することにより、高次の秩序構造を保持した機能性有機半導体材料を構築することを目的とした。 拡張π共役構造を有するオリゴチオフェンをモチーフにした機能性液晶分子の自己組織化ナノ構造の制御と電子・光機能について検討を行った。分子両末端に複数のアルキル基を導入したπ共役ポリカテナーオリゴチオフェンを有機金属カップリング反応を用いて合成した。得られたオリゴチオフェンのサーモトロピック液晶性を偏光顕微鏡観察、示差走査熱量測定およびX線回折測定により調べたところ、スメクチック相、カラムナー相、キュービック相などの多様な液晶相を発現した。これらの液晶ナノ構造はπ共役部位とアルキル部位の体積比の違い基づいて、自己組織的に形成することがわかった。π共役部位の集合構造に基づく特異的な電子・光機能の発現を指向し、液晶状態における電荷輸送特性を調べた。その結果、拡張π共役部位からなるレイヤーおよびカラム状構造が、有効な電子伝導パスとして機能することが明らかとなった。また、これらのポリカテナーオリゴチオフェン液晶を一軸的に配向させて作製した薄膜は、高い偏光発光特性を示した。偏光比は約11であり、赤色発光が観測された。さらに、オリゴチオフェンの薄膜は、電気化学的酸化還元に伴い顕著な色調変化(エレクトロクロミズム)を示すことがわかった。 また、オリゴチオフェン以外にもレドックス活性π共役分子であるテトラシアノアントラキノジメタンや双安定性[2]ロタキサンの液晶化および物性評価についても検討を行った。特に、液晶性[2]ロタキサンにおいては、レドックス刺激によって環状部位が軸部位を可逆的に移動(シヤトリング)することをサイクリックボルタンメトリーおよび紫外可視吸収スペクトルにより明らかにした。非共有結合性相互作用や分子のトポロジーを制御し、超分子化学的な特性を利用することにより、分子のバルク状態における集合構造を制御し、その諸物性を明らかにすることができた。
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