2006 Fiscal Year Annual Research Report
正義と平等に関する倫理学的研究 -社会福祉の哲学的基礎-
Project/Area Number |
06J10057
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 彰 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 平等 / 正義 / 倫理学 / 社会福祉 |
Research Abstract |
今年度の研究では、研究課題である正義の実質的内容を解明し、それに基づいて社会福祉システムへの規範的視角を提示する研究の一環として、正義の構想においてなぜ平等が主要な価値という地位を占めるのかについて検討した。その出発点として、十分かつ正当な道徳的理由がない限り、人々は平等に遇されるべきであるとする考え方、すなわち「出発点としての平等」(equality by default)を主たる検討対象とし、研究を進めた。2006年6月3日から11月30日までのオーストラリア国立大学大学院社会科学研究所哲学科における在外研究では、施設・人材の両面で申し分のない研究環境で、資料収集や研究交流を精力的に行いつつ当該の研究を進めた。その成果の一部は、オーストラリア国立大学において2006年7月2日から7日に渡って開かれたAustralasian Association of Philosophy Annual Conferenceで"Equality by Default"と題する学会報告を通じて発表し、今後の研究のさらなる進展のために必要なフィードバックが、参加者との質疑応答や自由闊達な議論をつうじて得られた。その後、当該の研究を実り多きものにするために、平等論をめぐる最近の研究成果を徹底的にサーヴェイした。その成果が「自由市場社会における平等と責任」,『社会思想研究』,第30号,2006年.である。この論文は、最先端の分配的正義論・平等論研究を分析的に検討した成果として、高く評価されている。
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