2008 Fiscal Year Annual Research Report
六朝文字における『山海経』の受容を巡って-図像と文献の接点
Project/Area Number |
06J10257
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松浦 史子 The University of Tokyo, 東洋文化研究所, 特別研究員(PD) (80570952)
|
Keywords | 『山海経』 / 郭璞 / 江淹 / 『山海経図讃』 / 巫山神女 / 瑤草 / 瑤姫神話 / 抒情文学 |
Research Abstract |
●基本研究とその成果● 六朝文学に於ける『山海経』の受容形態について、図像と文献の双方から総合的に考察する本研究の今年度の主要業績は、以下の二点である(文献研究を中心とする)。 (1)第一は、『山海経』の帝女伝説を中心に、郭璞と江淹の『山海経』受容の差異について明らかにした論考「江淹「瑤草」考-郭璞「〓草」からの継承と展開」(『東京大学東洋文化研究所紀要』第155冊、2009.3)を公刊した事である。郭璞は『山海経』に云う「姑〓山の帝女が化した」とされる「〓草」伝説について、古の帝王を崇拝する儒教的立場から「君子が佩すれば敬愛される草」と解釈する。江淹は、それに対して、当の帝女伝説とその発展形である宋玉「高唐賦」の「巫山神女伝説」とを一体のものと解し、「瑤草」を女性美の衰えを嘆くものとする。さらに、江淹にとっての「瑤草」とは、江淹その人の多用する「瑤」の用例に鑑みれば、「生命美の儚さを嘆くもの」と「玉の永遠性」との両義性を有するものである。江淹は、「〓草」伝説については、郭璞の立場を継承することなく、新たな「瑤草」解釈を提示したのであり、このような語義の創造は、優れた抒情詩人として知られる江淹において初めて可能であったと結論づけた。 (2)第二は、本研究における文献的研究の集大成として、上記業績をも踏まえつつ提出した、博士学位請求論文「六朝文学における『山海経』の受容について-郭璞と江淹の場合」(東京大学大学院人文社会系研究科、3月6日受理)である。本論文は、郭璞と江淹の文学について新たな視座をもたらすのみならず、これまで殆ど研究が行われてはこなかった、六朝末に於ける『山海経』受容の実態をも明らかにするものである。
|