2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J10397
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 友徳 東京大学, 気候システム研究センター, 特別研究員(PD) (10512270)
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Keywords | チベット / アジア / 降水 / 気候形成 |
Research Abstract |
チベット高原による大気加熱の結果生じた北東アジアの乾燥地域を対象として,地球温暖化や植生分布の人為的改変による気温や降水の変化量について,領域気候モデルを用いた実験により定量的に評価した.さらにこの地域において,様々なスケールの山岳や地表面の不均一性に起因して発生する対流システムの特徴について,人工衛星による観測から調べた. 低緯度アジア地域の降水についても,チベット高原による影響という視点から調べた.実験は各月ごとに循環場を単純化し,これを領域モデルの境界値として使用する.チベット高原による大気の加熱を理想化してモデルに与え,それぞれの月における大気の応答を調べた.その結果,4〜5月には南アジア地域で対流圏中層に沈降流が卓越し,対流システムの発達を抑制していることが示唆された.6〜7月にかけてインドモンスーンの急激なオンセットに対応する降水がインド北西部へと広がっていくことが知られている.簡単化したモデルによる計算の結果,6〜7月にはチベット高原の大気加熱の結果として生じる沈降流は南アジアから消滅することが示され,観測による降水量の増加や上昇流の強化とよく一致していることが分かった.これらの数値実験の結果から,インドモンスーンの季節進行とチベット高原の大気加熱が密接に関連していることが指摘された. 春のチベット高原は,対流活動の日変化が非常に活発であるにもかかわらず,これまでに十分な研究がなされていない.本研究では,地球環境フロンティア研究センターを中心に開発が行われている全球雲解像モデル(NICAM)を用い,チベット高原上の対流活動の日変化やそれ自身がアジアにおける降水の季節進行とどのように関連しているかを調べる.本年度はNICAMによるチベット高原上の対流活動の日変化について衛星観測との比較を行い,日変化の位相がおおむね再現されていることを確認した.
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Research Products
(3 results)