2006 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本政治思想史における政治と「市場」-「租税」の問題を中心に-
Project/Area Number |
06J10419
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河野 有理 東京大学, 大学院法学政治学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 田口卯吉 / 市場 / 封建・郡県 |
Research Abstract |
本研究のテーマは、「近代日本政治思想史における政治と「市場」-「租税」の問題を中心に-」である。 今年度は、特に、明治期の経済学者田口卯吉の政治思想の特色を探求することに時間を費やした。まずは、江戸期、明治期を通じて政治と市場との関係を考えるにあたって、鍵となる重要な概念として「封建」「郡県」論の文脈に着目した。以上の文脈の上に位置づけることで田口卯吉の政治思想の特色を捉えた論文「田口卯吉の夢-「郡県」の商業と「自愛」の秩序」を執筆した。同論文を『国家学会雑誌』第119巻3・4号に掲載した(2006年4月)。また、2006年10月20日、21日に岩手大学で開かれた日本思想史学会(テーマ「近代の漢学」)では、以上の成果を学会に問うべく「田口卯吉の政治思想」と題する口頭発表を行った。2007年には、3月19日、20日の2日間にわたって静岡県沼津の明治維新史資料館にて史料探索を行った。沼津は幕臣の家庭に生まれた田口が幼年時代を過ごした土地であり、同資料館には田口の恩師である英学者乙骨太郎乙の史料も残っている。同資料館において田口卯吉の思想形成過程をうかがわせる史料に接したことが、方法論的反省を促す契機となった。『国家学会雑誌』掲載論文では「郡県」「封建」論の枠組によって田口の思想を捉えたため、彼の主著『日本開化小史』の内在的読解はおろそかになっていたきらいがあった。以上のような反省に立ち、「「制度」と「人心」-『日本開化小史』の秩序像」と題する論文を現在執筆中である。同論文によって田口卯吉の政治秩序像の輪郭が明確になり、同時期の他の論者との比較に進むきっかけを得ることが出来た。同論文は、現在、ほとんど完成しており、必要な修正を加えた後、日本政治学会の発行する『年報政治学』に投稿する予定である。
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