2006 Fiscal Year Annual Research Report
ベクトル中間子の測定による高温高密度状態における強い相互作用の研究
Project/Area Number |
06J10719
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
織田 勧 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | クォーク・グルオン・プラズマ / ベクトル中間子 / クォーコニウム / 電子識別 / GEN |
Research Abstract |
本研究の目的は、米国RHIC加速器の高エネルギー重イオン衝突実験、PHENIX実験において、2005年に行なわれた銅原子核同士の衝突実験のデータを用いて、電子対を捉えることによりベクトル中間子を測定し、高温高密度状態における強い相互作用の性質、特にクォークが閉じ込めから解放されたクォーク・グルオン・プラズマ(QGP)相の性質を研究することである。 本研究では絶対的な収量・断面積を求めるのが目的であるので使用する検出器の較正がきわめて重要である。各検出器のデータを確認し、質の悪いデータを取り除き、特に問題があった電磁カロリメータの詳細な較正を行ない、その較正結果を簡単に使えるようにした。また飛跡の再構成に問題点があることがわかったが、取得したデータとシミュレーションを比較したところ、影響は小さいことがわかった。電子の識別パラメータを、バックグラウンドを差し引いた後の正味の信号の有意性が最大になるようにして、最適化を行った。データ取得の際に稀事象を逃さないようにトリガーを使用したので、トリガーの検出効率、不感領域を求めた。 これらの結果を用いてJ/ψ中間子の収量を導出して、高温高密度状態に関する国際会議であるQuarkMatterで発表した。その結果をくまなく確認した後に、2007年度中に雑誌に投稿する予定である。 さらに、RHICでの他の核種の衝突(陽子2006年、金原子核2007年)を行い、そのデータを取得した。主に、電子識別検出器であるRICH検出器の準備、保守、運用、監視を行ない、良質なデータが取れていることを確認した。 また、将来のベクトル中間子のより精密な測定のために、以前から開発を進めてきたガス電子増幅器(GEM)を用いたタイムプロジェクションチェンバー(TPC)について論文を学術誌に出版し、会議で発表し、GEMを用いた電子識別検出器の検証実験を広島大学で行った。
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