2006 Fiscal Year Annual Research Report
光合成生物の分子化石を用いた白亜紀絶滅境界の有光層内無酸素環境形成機構の解明
Project/Area Number |
06J10779
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柏山 祐一郎 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ポルフィリン / 窒素同位体 / 炭素同位体 / 高速液体クロマトグラフィー / マレイミド / X線結晶構造解析 / 白亜紀 / 海洋無酸素事変 |
Research Abstract |
化石ポルフィリン分析手法の確立・改善 動的な温度コントロールが可能なカラムオーブンをHPLCに導入し、分析効率を改善させた。同位体測定では、EA-IRMSの分析感度を大幅に改善させ、窒素及び炭素同位体組成を決定することに成功した(従来の10^3倍の分析感度)。また、ボルフィリンをマレイミド化しGC/C/IRMSを用いて同位体測定することで、極微量のポルフィリンの窒素の同位体組成を決定する手法を確立した(従来の10^4倍以上の分析感度)。以上により、掘削コアのような少量の堆積物試料に用いうる実用的な化石ポルフィリンの同位体組成分析法を世界で初めて確立した。 X線結晶構造解析による微量の化石ポルフィリンの構造決定法の確立 NMR分析で障害となるバナジウムをキレートさせた化石ボルフィリンについて、微量の試料(100μg程度)から単結晶を得、X線結晶構造解析により化学構造を決定する手法を確立した。これにより、これまで報告のな:かった化合物を報告した。 白亜紀黒色頁岩のポルフィリン窒素・炭素同位体組成分析 中部イタリアで得られた、白亜紀中期の海洋無酸素事変(OAE)時にテチス海西部に堆積した黒色頁岩、即ちセリ層(OAE-1a)及びボナレリ層(OAE-2)の各試料について、化石ポルフィリンを抽出・分析した。その結果、光合成生物一般を起源とすると考えられるボルフィリン(DPEP)について、(a)窒素同位体組成は窒素固定を行うシアノバクテリアに特徴的な値を示し、(b)炭素同位体組成からは、炭素同化に際しての炭素の同位体分別が通常の海洋藻類に比べて有意に小さく、シアノバクテリアなどにみられる基質炭酸の綱胞内への能動輸送やPEPC酵素を用いた炭素同化が、当時の光合成一次生産において重要であったことが示唆された。よって、OAE当時の海洋では、窒素固定シアノバクテリアが主要な一次生産者であったことが示された。
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