2006 Fiscal Year Annual Research Report
運動からの構造復元および運動視差における総合的モデルの構築
Project/Area Number |
06J11352
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
細川 研知 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 実験心理学 / 視覚 / 運動立体視 / 陰影からの構造復元 / 体性感覚 |
Research Abstract |
当年度の研究では、運動視差と動的陰影との関係についての研究を中心に行った。自然条件下では運動視差を含む運動からの奥行き復元が起こると、陰影の変化も同時に起こる。したがって運動からの奥行き復元と陰影の変化は同時に起こっている。このため両者の相互作用があることが考えられる。本年度はこの研究を行い、その成果を2件発表した。 陰影からの奥行き形状知覚では凸面と凹面の区別が難しい。これは光源位置情報が定まらなければ凹凸が一意に定まらないという計算上の制約のためだと考えられている。今回の研究では、光源(ランプなど)を手に持ち、その位置情報を体性感覚で与えると陰影からの形状復元の手がかりとなるという仮説を立て実験を行った。この結果、陰影からの構造復元では、現状では運動視差のような身体運動情報の寄与は見つけられなかった。よって、体性感覚による光源位置情報は理論上利用可能であるものの、実際の知覚では利用が難しいことが示された。この理由は、進化の過程で、能動的に移動できる光源を利用する機会がなかったからではないかと推論される。 陰影から奥行き構造を決定するには、陰影を作る光源方向が決定されている必要があり、一般的には太陽のような上方に固定された光源があるというバイアスなどがあるとされている。しかし、陰影として解釈可能な視覚刺激を運動させた場合、その動きは奥行き構造の変化とも光源の移動ともどちらでも解釈可能である。本研究では、その詳細を調べた。その結果、光源方向を固定するようなバイアスがある場合には陰影の変化は奥行き構造の変化と知覚されやすく、それがない場合には光源方向の変化と知覚されやすいことが示された。後者の場合には、物体の剛体性の仮定など、奥行き構造が不変であるというバイアスが働いているものと考えられる。
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