2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J11376
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
似鳥 啓吾 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | N体計算 / 高性能計算(HPC) / 数値積分法 / 並列計算 |
Research Abstract |
重要な研究成果を2件、報告する。 1件目は、N体計算の並列化アルゴリズムNINJA(N-body i‘n j Algorithm)を開発したことである。N体計算の並列化手法としては、二重ループの添字にならってi並列とj並列の二種類が知られていたが、この双方を二次元的に組み合わせることで超並列計算機における並列化効率を大幅に改善した。二次元アルゴリズムそのものは全く新しいものではなかったが、従来のものは、平方数のプロセッサしか使えなかった、独立時間刻み法(粒子ごとに刻み幅を変える高度な積分法)との組み合わせで負荷バランスが悪化する、という問題があった。NINJAではこの2つを同時に解決した。現在、8192プロセッサコアのCray XT3で、30Tflops(対ピーク75%)で動作した実績を持つ。京速計算機ターゲットアプリケーション(http://www.nsc.riken.jp/target-application/target-application.html、13番)にも採用された。Cray XD1での計算結果は、情報処理学会シンポジウムHPCS2007にて最優秀論文賞を受賞した。 2件目は、高次Hermite積分法をN体計算に応用したことである。Hermite積分法は、披積分関数の導関数を用いる積分法であり、導関数の計算コストが小さい場合には効率よく高精度積分が行えることが知られている。従来、高精度が要求されるN体計算には、加速度の1階微分までを用いた4次のHermite積分が用いられたきた。これは、2階以上の導関数の計算は実用的ではないとされてきたためである。これを、実際のところ2階、3階程度の導関数の計算コストはそれほど大きくならないことに着目し、6次および8次のHermite積分法をN体計算に応用した。6次積分法の計算コストは4次のものと比べて1.5倍程度でありながら、刻み幅は4次のものの2〜3倍にとることができ、従来よりも効率よく計算を行うことができる。8次積分法は、超高精度が要求される太陽系の長時間積分等にも応用が可能である。
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