2007 Fiscal Year Annual Research Report
ペスチウイルスの持続感染及び病態形成メカニズムの解明
Project/Area Number |
06J11533
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山根 大典 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アポトーシス / 先天性免疫 / 2本鎖RNA / ペスチウイルス / 持続感染 |
Research Abstract |
牛ウイルス性下痢ウイルスによる持続感染は発育遅延や免疫抑制を引き起こし、養牛農家の経営上大きな問題となっている。これまでの研究により、持続感染牛の臨床徴候や先天性免疫反応レベルはウイルスRNAの蓄積量と正の相関関係にあることが判明した(Yamane, et. al., 2007,Vet.Microbiol.)。アポトーシス誘導は感染牛の病態形成に深く関わっていることが考えられることから、ウイルス感染細胞のアポトーシス経路の解析を2種類の細胞を用いて行った。細胞病原性(cp)株と非細胞病原性(ncp)株どちらの感染によっても細胞死を誘導する特殊な性質を持つMDBK細胞とncp株が細胞病原性を示さない初代培養細胞(BFM細胞)におけるシグナル伝達の違いをマイクロアレイ解析によって調べた結果、MDBK細胞では小胞体ストレス経路が、BFM細胞ではインターフェロン経路が強く誘導されていた。このことは、ウイルス感染によって誘導されるアポトーシスは細胞集団によって異なる経路を介すことを示すものであり、ncp株感染に対する両細胞の振る舞いの違いを明らかとする重要な手掛かりとなると考えられた。ウイルス非構造(NS)タンパクによる宿主因子制御機構の解析については、これまでイースト2-ハイブリッド法によりNS3と結合する因子を探索し、細胞の生存や増殖、癌化に関わるスフィンゴシンキナーゼ1(SphK1)を同定した。組換え精製NS3タンパクを作出し、in vitroキナーゼアッセイを行った結果、NS3は濃度依存的にSphK1活性を抑制することが判明し、更に、SphK阻害剤やドミナントネガティブ変異体によるSphK活性の抑制はウイルス複製の増強に繋がることが明らかとなり、NS3はセリンプロテアーゼやRNAヘリカーゼとしての機能のみならず、SphK活性の制御によってもウイルス複製に貢献していることが示唆された。
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