2006 Fiscal Year Annual Research Report
16世紀オスマン朝の詩人、文人の実態と心性の解明、同時期西欧文人との比較研究
Project/Area Number |
06J11565
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮下 遼 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 西アジア史 / その他の各国文学 / 文化交流史 / 比較歴史学 / トルコ:フランス:イタリア |
Research Abstract |
本研究「16世紀オスマン朝の詩人、文人の実態と心性の解明、同時期西欧文人との比較研究」を行うに当たり、昨年度は研究遂行能力の拡充(主に言語習得)と背景知識の拡大(主にトルコ古典文学>に努めた一年であった。この2点については語学学習、研究書の参照を通して研究遂行者の予定する水準をクリア出来たと考えている。 夏季に行なった2ヶ月間の海外調査では各図書館、文書館におけり史料収集の他に、マルマラ大学のメフメト・アルスラン教授(神学)、スレイマニエ図書館のネディム・ギュヴェンリ氏の協力で、貴重な一次史料に接する機会に恵まれ、両氏の力添えで古典詩の読書会、現地研究者の集いに参加する僥倖を得て、後者については無形ながら本研究にとって刺激的な体験を得る事が出来た。 昨年の調査の成果として、3点の論文(2,3,4)が執筆中である。2は、オスマン朝詩人における都市把握、都市観という問題を扱い、定型的な本歌取りの文化の中に在るトルコ古典文学における都市記述の様態を、都市建造物、人的要素の2点から読み解く。 3は、西欧旅行記作家の中にあって、イスタンブルという同じ対象を扱いながら、古代異教文化の探索を志向した人文主義者ペトルス・ギリウスを旅行記史料群の中に位置付ける内容である。通文化比較の視座を欠く事の出来ない本研究にあって、以降も旅行記史料は積極的に活用される予定であり、西欧旅行記史料を利用するに当たっての基礎研究である。 4はオスマン朝詩人、文人の特徴を考える上で、ペルシアに起源を持つ『酌人の書』という文学ジャンルに焦点を絞り、その中でも特に重要と思われる詩人、イスラム法官ネヴィーザーデ・アターイーの作品から文学的潮流、流行の変化を追う。2同様に、文学史料の社会史における可能性を模索する意図も含む。
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