1996 Fiscal Year Annual Research Report
タイ国東北部および北部におけるオーラルヒストリーに基づく村落史の研究
Project/Area Number |
07041009
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
加藤 久美子 名古屋大学, 文学部, 講師 (80252203)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CHANTACHON S マハーサーラカム大学, 東北タイ芸術・文化研究所, 研究員
黒田 景子 鹿児島大学, 教養部, 助教授 (20253916)
桜井 由躬雄 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (80115849)
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Keywords | 東南アジア / 村落 / 移住 / 村落伝承 / 北タイ / 東北タイ / 南タイ / スマトラ |
Research Abstract |
北タイ調査地においては、タイ人研究者の著作やタイ国内の大学院に提出された修士論文の閲覧、収集(複写)を通して、北タイ史研究の最新状況の把握をめざした。また、平成7年度に調査した村落に加えて、更に30か村ほどの村落で聞き取りを行った。そのデータは現在分析中であるが、扇状地上の場所による農業水利のあり方の違いなどが明らかにされつつある。東北タイ調査地(ヤソ-トン県マハ-チャナチャイ群)については、平成8年3月の調査結果を英文と和文で報告書にまとめた。その内容に概要は、以下のとおりである。(1)群の東低地と南低地に環濠集落の遺跡が分布している。(2)その環濠集落が放棄されたあとに、12-13世紀にクメール人が集落を作ったらしい。(3)そのあと(18世紀末よりも前)、スワイ人やクラ人、ラオ人が移住してきた。ここでいうラオ人は、群の南側や東側、ヴィエンチャン人から移住したものである。(4)18世紀末にラオ人が大量移住し、それと時を同じくしてスワイ人も移住してきた。(5)18世紀末のマハ-チャナチャイへの移入民の多くの析出地域は、シ-サケ-ト県ラシサライ群とウボン県クアンナイ群である。平成8年3月の実地調査村落の聞き取り調査は、シ-サケ-ト県ラシサライ群とウボン県クアンナイ群において、18世紀末にマハ-チャナチャイへ、なぜ、どのように人々が移住していったのかの詳細を知るためのものであった。一方、移住パターンや村落史の認識について、北タイ、東北タイと南タイからマレーシア北部にかけての地域およびスマトラとの比較も行った。その結果、村落史の歴史認識や移住原理は地域によってかなり異なることが判明した。例えば、東北タイでは農業生産不安定からくる移住志向が見られるが、スマトラのミナンカバウ人の場合か農業的には定着性が高く、交易都市群や砂金山地など男性労働市場の存在が男性個人の移住を奨励していることが明らかになった。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 桜井由躬雄: "「東北タイにおける村落の形成:ヤントン県マハチャナチャイ群における村落形成伝承について」" 東方学. 掲載予定. (1997)
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[Publications] 桜井由躬雄: "「陸域と海域」" 歴史学研究. 691. 2-14 (1996)
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[Publications] 黒田景子: "「『マフスリ伝説』の真実:マレーシア・タイのOral Traditionの例」" 鹿児島大学教養部史学科報告. 43. 21-28 (1996)
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[Publications] KATO,Kumiko: ""Changes in Sipsongpanna in theEighteeth Century :focusing on 1720s and 1730's"" 名古屋大学文学部研究論集(史学). 43. 1-18 (1997)
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[Publications] 桜井由躬雄: "緑色の野帖:東南アジアの歴史を歩く" めこん, 441 (1997)