1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07041040
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
庄司 博史 国立民族学博物館, 第3研究部, 助教授 (80142016)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沼野 充義 東京大学, 文学部, 助教授 (40180690)
中井 和夫 東京大学, 大学院・総合文化研究所, 教授 (40188868)
伊東 一郎 早稲田大学, 文学部, 教授 (60151495)
畑中 幸子 中部大学, 国際関係学部地域研究所・所長, 教授 (00019340)
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Keywords | ウクライナ / ロシア / エストニア / リトアニア / 民族意識 / ソ連解体 / 移民 / カレリア |
Research Abstract |
本研究はソ連解体以降の東ヨーロッパの民族意識の動態を現地での聞き取りを中心にして、明らかにしてきた。現在まで当該民族の諸階層、年齢層を対象にした調査や、周縁部で他民族と接触する人々との比較により、意識の多様性や流動性をつぶさにみてきた。本年度は、当初よりの計画にしたがい、国外への移民、亡命者を対象にして、本国から遠隔し、ことなる社会におかれた人々がいかなる民族意識を保持し、また本国との関係を維持しようとするかについて調査をおこなった。カナダ在住ウクライナ人は、いわゆる旧祖国へ政治的な関わりより、文化的・言語的伝統維持による民族的紐帯の維持に関心をもつ人々が多いが、政府の経済的擁護策が一方では、文化運動自体の弱体化を招く面もみられる。それに対しエストニアのロシア人においては、文化的伝統というより、極度に政治的な立場から、エストニア独立回復にさいして制限された社会的地位復権をめざす傾向にある。以上から、国外とはいえ、おかれた国家の政策により民族の意識、運動の現れかたに大きな違いがある。またエストニアのロシア人に関しては、ロシア人インテリを中心に調査されてきた民族意識が部分的に西欧的な多文化思想を受け入れつつあるのに対し、歴然とした差も存在する。また一方では、ソ連の解体後数年を経過し、研究対象としてきた諸民族では、当初の政治的、経済的混乱から、その基盤は脆弱とはいえ、一種の諸勢力間の均衡状態に移りつつある。この状況の変化と民族意識との関わりを明らかにするため、リトアニアでは、各層を対象に総選挙をはさんだ時期に、またカレリアでは、言語運動、言語政策を中心に民族意識の動向に注目した。これらの調査では、人々の民族意識も単なる危機意識、他に対する対抗意識に根ざしたものから、次第により現実的な方向に向かいつつあるといえる。
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Research Products
(9 results)
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[Publications] 庄司 博史: "「エストニアのペッツェリ領土問題-分断されたセトゥ人をめぐって」" 『国立民族学博物館研究報告』. 22巻4号(印刷中). (1998)
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[Publications] 庄司 博史: "「ロシアにおけるエストニア離散民」" 井上紘一編『民族の共存を求めて 3』北海道大学スラブ研究センター. (印刷中). (1998)
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[Publications] 庄司 博史: "「民族境界としての言語」" 青木保他編『民族の生成と論理』岩波書店. 69-96 (1997)
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[Publications] 畑中 幸子: "「ヨーロッパの難民 1945-1951-バルト三国のdisplaced persons」" 『国際研究』. 15号(印刷中). (1998)
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[Publications] 伊東 一郎: "「ルシン人とは何か-カルパチアウクライナ人の民族意識」" 沼野充義他編『バルトスラブの変貌』東大出版(予定). 未定.
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[Publications] 伊東 一郎: "「カナダにおけるウクライナ文化」" 『ロシア文化研究』. 5号(3月発行予定). (1998)
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[Publications] 沼野 充義: "「O ne ochen russko:poetike Dovlatova」" 『Slavistika』. 12号(3月発行予定). (1998)
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[Publications] 畑中 幸子: "『民族の栄光と苦悩』" 東大出版(予定),
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[Publications] 中井 和夫 (柴 宣弘・林 忠行と共著): "『連邦解体の比較研究』" 多賀出版, 260頁 (1998)