1995 Fiscal Year Annual Research Report
チンパンジーを主とする西アフリカ生息霊長類の比較行動・生態学的研究
Project/Area Number |
07041135
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉山 幸丸 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (20025349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KOMAN Jeremy ギニア国ニンバ山研究所, 所長
横田 直人 大分短期大学, 園芸科, 講師 (30158365)
佐倉 統 横浜国立大学, 経営学部, 助教授 (00251752)
松沢 哲郎 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (60111986)
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Keywords | 採食品目 / 糞分析 / 道具使用行動 / 主要食物資源 / 世代間伝播 / 臨界期 / 群間行動変異 / 文化的要因 |
Research Abstract |
1.西アフリカ・ギニア共和国のボッソウに生息する野性チンパンジーの群れを対象に、直接観察及び糞分析法を用い、主要食物資源の空間、時間分布と、観察された採食品目の構成及び頻度との関係を調査した。主たる遊動域の一次林内に果実が豊富な時期には一次林を利用するが、果実が不足すると、周辺部の二次林内の多様な植物に依存する。この一次林の果実量が、遊動パターン、遊動集団サイズなどの基本的な社会的パラメーターを規定していることが明らかになった。 2.この群れの顕著な特徴である、多彩な道具使用行動による採食の季節的変化を調べた。1.で述べた果実が不足する時期に道具を用いる傾向が顕著にみられた。このことから、主要食物の不足時に代替の栄養を確保する必要性が、霊長類の道具使用行動の発生及び定着に重要な影響を持つことが示唆された。 3.同群の道具使用行動の個体発達について、野外実験場におけるVTR記録の分析により、精密な観察を行った。チンパンジーのコドモ期のある期間に道具使用行動の獲得に重要な行動が頻出し、オトナ期み近づくにつれ特定の行動に収束していった。世代間伝播にかかわる模倣、学習パターンについて重要な臨界期が存在し、その過程についての、ヒトとの質的な異同が明らかになった。 4.近隣のチンパンジー生息地であるニンバ山において、基礎的な植生調査及び、痕跡等による生態、行動調査を行った。両調査地は近接している(約10km)にもかかわらず、植生等の生態条件、道具使用などの行動に関して異なる点がみられた。観察される群間の行動変異について、環境的、文化的要因がそれぞれ果たす役割が示唆された。この点を明らかにするため、さらに詳しいニンバ山の調査が必要である。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Sugiyama Y.: "Tool-use for catching ants by chimpanzees at Bossou and Monts Nimba,West Africa." Primates. 36. 193-205 (1995)
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[Publications] Sugiyama Y.: "Drinking-tools of wild chimpamzees at Bossou." American J. Primatology. 37. 263-269 (1995)
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[Publications] Yamakoshi G. & Sugiyama Y.: "Pestle-pounding behavior of wild chimpanzees at Bossou,Guinea: A newly observed tool-using behavior." Primates. 36. 489-500 (1995)
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[Publications] 杉山幸丸: "動物の道具使用と人類文化発生の条件" 霊長類研究. 11. 215-223 (1995)
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[Publications] Tonooka R. & Matsuzawa T.: "Hand preferences of captive chimpanzees (pantroglodytes) in simple reaching for food." International Journal of Primatology. 16. 17-35 (1995)
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[Publications] 松沢哲郎: "野性チンパンジーの石器使用にみる「教示」" 日本ロボット学会誌. 13(5). 584-587 (1995)
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[Publications] Matsuzawa T. & Yamakoshi G.: "Comparison of chimpanzee material culture between Bossou and Nimba,West Africa." Cambridge Univ. Press,Russon,A.,Bard,K.,& Parker,S. (eds.) "Reaching into thought". (in press). (1996)
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[Publications] Matsuzawa T.: "Isomorphism of symbol-use and tool-use in chimpanzees." Cambridge Univ. Press,Mcgrew,W. et al. (eds.) ,"Great Ape Societies".(in press). (1996)