1996 Fiscal Year Annual Research Report
タンガニイカ湖の魚類群集における多様性の維持機構に関する研究
Project/Area Number |
07041147
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
堀 道雄 京都大学, 大学院理学研究科, 教授 (40112552)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MWAPE L.M. ザンビア水産庁, ダンガニイカ湖支所, 所長
MUDENDA H.G. ザンビア水産庁, 中央研究所, 所長
木村 清志 三重大学, 生物資源学部, 助教授 (00115700)
近藤 高貴 大阪教育大学, 教育学部, 助手 (50116159)
山岡 耕作 高知大学, 海洋生物教育研究センター, 教授 (20200587)
幸田 正典 大阪市立大学, 理学部, 講師 (70192052)
柳沢 康信 愛媛大学, 理学部, 助教授 (90116989)
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Keywords | タンガニイカ湖 / シクリッド / 魚類群集 / 種内多型 / 鱗食魚 / 左右性 / 種間相互作用 / 群集構造 |
Research Abstract |
本調査研究では,群集内に存在する様々な種内多型に注目し,種内多型に関わる種間関係が,群集の多様性の維持に果たす役割を具体的に解明することを目的とし、ザンビア国ムプルング周辺において,次の様な調査を行った. 1)岩礁域に調査枠を設定してサンプリングを行い,種類組成と種毎の個体群サイズを調査し,胃内容分析から食物網の解析を行うことによって,魚類群集の構造把握を試みた. 2)各魚種の場所利用,産卵・保育行動,配偶システム,摂食行動については潜水調査を行い,地域間でその比較を試みた.種内多型を示す種については,各型ごとに行動を観察し,それらの種の生態・形態の違いとそれをとりまく種との関係が,群集構造と安定性に及ぼす影響を調査した. 3)特に,群集構造にとって重要な位置を占める魚種については,個体群内の多型とそれが他種に及ぼす機能を解明した. その結果得た特筆すべき成果としては以下のような点である.鱗食魚に限らず全ての魚種が左右性という種内多型を持っていることが分かった.そこで、魚類群集におけるその意味を解明するために、各魚種の体長別の左右生の比率を調べた.その結果,次のことが解明された. 1)ほぼ全ての魚種で、その比率は体長に応じて変動しており,鱗食者と同様,数年周期の振動をしてた. 2)その変動は分類群グループごとに同調する傾向を示した.鱗食魚以外は稚魚〜幼魚期の生活様式の類似でグループ分けした方が同調の程度は良いようであった.これは、その振動を引き起こしているのは捕食-被食の種間相互作用であることをつよく示唆する. 3)従って,左右性という種内多型が補食-被食の相互作用を通じて,群集の多様性と安定性の維持に大きな役割を果たしていることが示されたと考えられる.
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[Publications] Matsuda,H.,Hori,M.,& Abrams,P.A.: "Effects of predator-specific defence on biodiversity and community complexity in two-trophic-level communities." Evolutionary Ecology. 10. 13-28 (1996)
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[Publications] Yuma,M.,Narita,T.,Hori,M.& Kondo,T.: "Food resources of shrimp-eating cichlid fishes in Lake Tanganyika" Environmental Biology of Fishes. 41. (1997)
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[Publications] Kawanabe,H.,Hori,M.& Nagoshi,M.(eds.): "Fish communities in Lake Tanganyika" 京都大学学術出版, 298 (1997)